2011 Fiscal Year Annual Research Report
光誘起協同現象を用いた超高速光スイッチング手法の開拓
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22740197
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松崎 弘幸 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 研究員 (80422400)
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Keywords | 強相関電子系 / 分子性固体 / 光物性 / 光誘起相転移 / フェムト秒過渡分光 |
Research Abstract |
光照射によって、電子系全体の秩序が高速に遷移する現象は、光誘起相転移と呼ばれ、近年、精力的な研究が行われている。この現象の最大の特徴は、巨大かつ高速な光応答性であり、高速・高繰り返し動作が可能な次世代型の光スイッチング素子の新しい動作原理として、非常に魅力的な現象である。しかしながら、このような超高速スイッチングの実現を目指した系統的な物質探索や、応用展開を視野に入れた基礎研究は、これまでほとんど行われていない。本研究では、有機電荷移動錯体および遷移金属錯体を対象として、これらの系で発現する超高速な光誘起協同現象の探索と、これらを利用してテラビットオーダーの高速・高繰り返しの光スイッチングを実現することを目指した。以下に、本年度の主な成果を述べる。 I.電荷移動錯体M2P-TCNQF4は、ドナー分子M2Pからアクセプター分子TCNQF4へ電子がほぼ完全に移動したモット絶縁体であり、同種分子間、異種分子間の双方に電荷移動遷移を有する二次元的な電子構造を持つ。また、低温で構造相転移を起こし、分子が二量体化する。本錯体について、高温相および低温相において、フェムト秒ポンププローブ分光測定を行い、超高速光誘起絶縁体-金属転移および構造相転移を見出した。 II.臭素架橋Pd錯体[Pd(en)2Br](C5-Y)2では、二つの異なる光子エネルギーのフェムト秒励起光パルスを時間差をつけて照射することで、低温のモット絶縁体相において、光誘起モット絶縁体→電荷密度波→モット絶縁体という超高速光スイッチングを起こすが、電荷密度波→モット絶縁体の効率は30%程度で、今年度更なる効率向上の実現する為に、実験条件の検討を行った。第2励起光パルスの強度を増加させると、二光子吸収過程によって逆過程であるモット絶縁体→電荷密度波が誘起され、効率向上には至らなかったが、今後得られた知見を基に実験条件の最適化を図っていく予定である。
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Research Products
(4 results)