2010 Fiscal Year Annual Research Report
パルス放射光X線を用いた光誘起相転移ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
22740207
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
野澤 俊介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別助教 (20415053)
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Keywords | 光物性 / 光誘起相転移 |
Research Abstract |
本研究の目的は"1.新規測定システム開発"を行い、そのシステムを用いて世界初の試みである"2.ピコ秒の時間分解能で元素選択したスピン状態ダイナミクスの直接観測"を行うことである。本年度の研究実績として(1)に関しては以下(1)-(3)の設計開発を行い測定システムの立ち上げを行った((1)真空内においてマイクロメートル精度でサンプル位置を制御する真空ステージの設計・導入、(2)数%のスペクトル変化を高いS/N比で測定するためのデーター取得システムの開発、(3)発光分光器へのレーザー導入システムの開発)。次年度に予定される本測定に向けて、システムは順調に立ち上がっている。2.に関してはKβ発光スペクトルに現われる過渡的なスペクトル変化の観測を目指している。ポンプ-プローブ方式を用いるためX線の繰り返し周波数は1kHzに制限されているが、この低フラックス条件下でKβ発光スペクトル中の数%の強度変化を捉えられるよう、スピン状態が異なる金属錯体化合物を参照サンプルとして用い、定常状態における予備実験を行った。測定ではプローブ光のX線について多層膜を用いた準単色光を用いることで、低繰り返し周波数に起因した低フラックス条件を補うことを試みた。準単色光ということでKβ発光スペクトルに重なる弾性散乱由来のバックランドは大幅に低減され、X線のバンド幅を広げて強度を稼ぐことで低フラックス条件においてもKβ発光スペクトルの変化からスピン状態変化を議論することに成功した。加えて、対象サンプルについて時間分解XAFS測定を行うことでレーザー励起条件の割り出しも行った。次年度は、本年度に開発した測定システムを用い、かつ予備実験の情報を生かして、ピコ秒オーダーにおけるスピン状態変化の直接観測を試みる予定である。
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