2011 Fiscal Year Annual Research Report
パルス放射光X線を用いた光誘起相転移ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
22740207
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
野澤 俊介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別助教 (20415053)
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Keywords | 放射光 / X線 / 時間分解実験 / 分光 |
Research Abstract |
本年度は、まず、昨年度に開発した測定システムを放射光実験用ビームラインにインストールする作業を行った。スペクトルを測定する装置としてX線光子検出器型2次元検出器を用いた。この検出器は電気信号を入力することで光子検出のタイミングをナノ秒の時間制度でコントロールすることができる。異なる光源を用いて時間分解実験を行う際には、それら光源周波数の相違が問題となるが、本システムでは検出器に電子信号を与えることで検出を行うタイミングをコントロールし、この問題を解決した。また、X線分析結晶として高分解能・高検出効率を実現するためにヨハン型円筒状結晶を採用した。本結晶を用いた分析システムは、試料からの発光を大きな立体角で捉え、エネルギー分散させた光を、その垂直方向に集光させて検出器面に集めることができる。そのため、重金属の特定X線における電子軌道間の相互作用に起因したサテライト構造等を、高い分解能で測定することが可能となっている。次に本システムを用いて、光によって超高速に誘起される電子状態変化と酸化数変化の同時測定を試みた。光による物性の変化は、その応答速度の高速性から次世代の光スイッチングデバイスの動作原理として近年非常に注目されている。今回実施した時間分解実験では、十分に予備実験を行ったために、見積り通りの変化量が得られ、極めて好調であった。そこでは、光励起による電子状態変化に起因したサテライト構造の出現や、それに伴う構造変化に起因した酸化状態の変化の観測等に成功している。これらを現在論文に投稿中である。
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