2011 Fiscal Year Annual Research Report
導電性スピンフラストレート系におけるスピン電荷結合の単結晶中性子非弾性散乱
Project/Area Number |
22740209
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
富安 啓輔 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20350481)
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Keywords | フラストレーション / 中性子散乱 / 部分無秩序 / 金属絶縁体転移 / all-in all-out / スピン軌道相互作用 / 白色中性子非弾性散乱 |
Research Abstract |
次年度である平成23年度では、平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響が深刻であり、多数の試行錯誤が求められる挑戦的課題であるスピネルLiV_O_4に関し中性子研究を継続することができなかった。そこで、並進させていた金属間化合物Mn_3Ptの中性子研究をさらに押し進めた。その結果、初年度に観測した常磁性相における動的部分無秩序状態のスピンの空間相関は、主に2次元正方格子のスピン揺らぎから成り、面間には僅かに反強磁性相関が存在することを初めて明らかにすることができた。この空間相関は、磁気秩序相(F相)の磁気構造と同一であるため、このスピン揺らぎはF相の磁気構造の形成へ向かう途中の臨界現象と解釈できそうである。 新たなテーマとして、同じく導電性フラストレート系として注目を集めているパイロクロアNd_2Ir_2O_7を、中性子散乱によって研究した。本物質は約32Kで磁性の変化を伴うが構造の変化を伴わない金属絶縁体転移を示し、フラストレーションとの密接な関係が期待されている。しかし、Irは中性子吸収係数が大きく、中性子実験は非常に困難である。そこで、我々はNdの4f電子結晶場を内部磁場のプローブとして用い、Irの磁性を推測するという手法をとることにした。その結果、ある程度ではあるものの手法の整備に成功し、最低温相で伝播ベクトルσ=0の磁気長距離構造が発生することを観測した。また、スピン軌道相互作用に由来するイジング型磁気異方性の獲得が、金属絶縁体転移のトリガーではないかという提案を行った。 大量の微小単結晶の整列による中性子散乱法とは異なるアプローチとして、交差相関法と呼ばれる白色中性子散乱法の改良にも取り組んだ。その結果、測定対象と実験条件をひどく選ぶという条件付きではあるものの、本方法による効率の利得が得られる場合があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響は深刻であったが、並進させていたテーマを押し進めたことと、新たなテーマを積極的に取り入れたことにより、導電性スピンフラストレート系に関する中性子散乱研究や手法開発を推進して来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子源の回復が不定であるので、獲得できた貴重なビームタイムを最大限活用出来るよう、テーマを臨機応変に選定して行く予定である。その際、導電性スピンフラストレート系を中心に、そこからヒントを得た新たなテーマも積極的に検討して行く。また、中性子測定だけではなく、マクロ測定や放射光測定を積極的に取り入れることにより、より多角的な研究発展を模索する。
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[Journal Article] olecular Spin-Orbit Excitations in the J_<eff>=1/2 Frustrated Spinel GeCo_2O2011
Author(s)
K.Tomiyasu, M.K.Crawford, D.T.Adroja, P.Manuel, A.Tominaga, S.Hara, H.Sato, T.Watanabe, S.I.Ikeda, J.W.Lynn, K.Iwasa, K.Yamada
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Journal Title
Phys.Rev.B
Volume: 84
Pages: 054405-1-054405-7
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] PrCu_4T(T=Au,Ag)のf^2電子状態が関わる局在-遍歴性の中性子散乱を用いた研究2012
Author(s)
小林拓希, 斉藤耕太郎, 富安啓輔, 岩佐和晃, 張帥, 石川義和, J.-M.Mignot, A.Gilles, A.I.Kolesnikov, A.T.Savich, G.E.Granroth
Organizer
日本物理学会第67回年次大会
Place of Presentation
関西学院大戸
Year and Date
2012-03-27
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[Presentation] J-PARC偏極度解析中性子分光器POLANO計画の進展2012
Author(s)
大山研司, 岩佐和晃, 伊藤晋一, 横尾哲也, 富安啓輔, 松浦直人, 平賀晴弘, 藤田全基, 木村宏之, 佐藤豊人, 佐藤卓, 有馬孝尚, 猪野隆, 吉良弘, 坂口佳史, 奥隆之, 有本靖, 鈴木淳市, 清水裕彦, 武田全康, 金子耕士, 野尻浩之
Organizer
日本物理学会第67回年次大会
Place of Presentation
関西学院大
Year and Date
2012-03-25
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[Presentation] J-PARC偏極度解析中性子分光器POLANO計画の進展2011
Author(s)
大山研司, 岩佐和晃, 伊藤晋一, 横尾哲也, 富安啓輔, 松浦直人, 平賀晴弘, 藤田全基, 木村宏之, 佐藤豊人, 佐藤卓, 有馬孝尚, 猪野隆, 吉良弘, 坂口佳史, 奥隆之, 有本靖, 鈴木淳市, 清水裕彦, 武田全康, 金子耕士, 野尻浩之
Organizer
日本物理学会第67回年次大会
Place of Presentation
富山大
Year and Date
2011-09-22