2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 未知数 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (50433313)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 量子乱流 / 臨界状態 / ユニバーサリティ / 臨界指数 / 量子渦 |
Research Abstract |
本研究の目的は、新しい研究分野として急速に注目を浴びつつある量子乱流に対し、その理解を深めるための新しい量子乱流研究を提案・構築することである。平成24年度の研究目標は、古典乱流と量子乱流の間に存在する普遍性の探求であった。私はこの目標に向けて、量子乱流と古典乱流の数値シミュレーションを並行して行い、その統計的物理量を比較することを行った。乱流はレイノルズ数と呼ばれる無次元量で特徴づけられるが、今回私がこの計算を行うにあたって、レイノルズ数が無限大の極限における乱流が、相転移現象で見られるような臨界状態あり、臨界指数で特徴づけられるような普遍性クラスを持つのではないかという仮説を立て、この仮説に基づいて、レイノルズ数の大きい領域をシステマティックに調べる数値シミュレーションを行った。その結果、レイノルズ数の発散に向かって、状態の2点相関関数から得られる相関長が発散傾向にあること、およびその発散の振る舞いが冪的であること、そしてその冪指数が量子乱流、古典乱流で一致しているこという結果を得た。この結果と、以前の研究によって得られている、エネルギースペクトルのコルモゴロフ則の結果とを合わせることによって、レイノルズ数の無限大の極限において、確かにこれら2つの乱流は臨界状態にあり、さらにコルモゴロフユニバーサリティと呼ぶべき普遍性クラスに両乱流が属することが明らかとなった。 また、このユニバーサリティの起源を探るための計算として、量子乱流を相対論的に拡張した模型の数値シミュレーションも行ったところ、上記2つの乱流とは異なる普遍性を持っていることが明らかとなった。この模型におけるトポロジカル欠陥である量子渦のダイナミクスは、今までの考えてきた量子流体中の量子渦や古典流体の渦とは全く異なるものであり、つまり前述のユニバーサリティの起源が渦のダイナミクスにあることが、ほぼ決定的なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目標は量子・古典乱流間にある普遍性の探求であったが、コルモゴロフユニバーサリティの発見を通して、この目標はほぼ達成されたと思われる。本目標が達成された大きな理由として(1)前年度までに開発していた数値シミュレーションのコードがほぼ完成していたこと、(2)あらかじめ大きなレイノルズ数に焦点を絞って計算していたこと、(3)計算機の不調とそれに伴う点検作業がほとんど無かったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は稼働していた数値計算機の台数が少なかった。幸運にも計算機の不調はなかったが、仮に不調が合った場合、それよって引き起こされる研究の停滞が深刻であったと思われる。今年度は東京大学物性研究所のスーパーコンピューターの使用を申請・採択されており、この点が大きく解消されている。これに伴い、前年度は大きなレイノルズ数の領域のみであった計算を、より小さなレイノルズ数へと進めることが期待できる。
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Research Products
(6 results)