2010 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレーション格子を形成する遍歴磁性体における異常伝導現象の開拓
Project/Area Number |
22740220
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井口 敏 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (50431789)
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Keywords | 物性実験 / フラストレーション / 輸送現象 / 磁性 |
Research Abstract |
電荷-スピン自由度の結合した系における幾何学的フラストレーションの役割を調べるため、モット転移に代表される金属-絶縁体転移近傍における異常伝導現象の開拓を行っている。代表者等のこれまでの研究によりパイロクロア型モリブデン酸化物はいずれも高圧下においては、5Kの低温まで温度依存性のほとんどない常磁性金属状態になることが分かっていた。理論的な研究結果も踏まえると、この常磁性金属状態は、反強磁性的スピン相関、フラストレーション格子、伝導電子の組み合わせによって発現する特徴的な電子物性、すなわち、電荷-スピン自由度の結合した系における新たな異常輸送現象の表れであると考えられ、その詳細の理解が望まれるが、高圧下での実験方法には限りがあるため詳細な実験を行うことは困難であった。 そこで平成22年度は、常圧下でも常磁性金属状態を得るために、スピングラス絶縁体であるY2Mo2O7においてYをCdで置換しホールドーピングを施した試料を高圧合成法を用いて作製した。Y2Mo2O7はホールキャリアにより金属化し、さらにドーピングを進めるとスピングラスが消失し常磁性かつ散逸的な金属状態を示した。この振る舞いは圧力下におけるそれと酷似しており、所望の状態が得られたと確信している。また、磁性の測定からは、予想通り反強磁性スピン相関が観測された。さらに比熱測定により今回初めて異常常磁性金属状態における電子質量の増大が観測されるなど、電荷-スピン自由度結合系における異常伝導現象の理解に貢献したと考えられる。
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Research Products
(4 results)