2011 Fiscal Year Annual Research Report
フラストレーション格子を形成する遍歴磁性体における異常伝導現象の開拓
Project/Area Number |
22740220
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井口 敏 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50431789)
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Keywords | 物性実験 / フラストレーション / 輸送現象 / 磁性 |
Research Abstract |
本年度は、主としてパイロクロア型モリブデン酸化物の異常常磁性状態において、実空間上のベリー位相によるトポロジカルホール効果の観測に成功した。 本研究は金属-絶縁体転移や格子系に由来する幾何学的フラストレーションによって起こる異常な磁気伝導現象を探り、スピン-電荷自由度がどのように物性に関わっているのかを調査することを基本的な目的として来た。これまでの研究結果から、フラストレーション格子系であるパイロクロア型モリブデン酸化物には異常な常磁性金属状態が高圧下に広く存在することが分かっていた。しかし、高圧下では詳細な物性を調査することは容易ではないため、特に異常常磁性状態の磁気輸送現象に関する知見が乏しかった。そこで、研究初年度にはY2Mo207の電子フィリングをCd置換によって制御(ホールドーピング)した結果、常圧下において、圧力下と同様の常磁性異常金属状態に転移させることに成功した。そのため、磁気輸送現象について詳細に調べることが可能となり、特に、この常磁性異常金属状態ではMoスピンの自由度は存在していることが分かった。 そこで本年度では、イジングスピンを持つTbをYサイトに置換することで、スピン自由度の残存する常磁性金属状態のMo電子系に、さらにカイラルな内部磁場を導入することを試みた。その結果、Tb置換系の異常ホール効果はTb濃度に関して比例ではなく、2~3乗のべきに従って増加することがわかった。この観測結果は実空間上に分布するベリー位相を感じたMoスピンが引き起こすトポロジカルホール効果と考えられ、スピンカイラリティーを希釈した系におけるカイラリティー濃度依存性を明らかにするとともに、ベリー位相の実空間描像に基づく解釈の正しさを示すことが出来た。
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Research Products
(14 results)