2010 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体の擬ギャップ状態における折りたたまれたフェルミ面の観測
Project/Area Number |
22740221
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 鉄平 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (10376600)
|
Keywords | 高温超電導体 / 角度分解光電子分光 / 擬ギャップ |
Research Abstract |
高温超伝導体における擬ギャップの起源は未解決の問題である。アンダードープ領域では、低温においてエネルギーギャップの方向依存性が単純なd-波からずれており、超伝導と競合する秩序状態であることが示唆されている。理論の多くは、(π/2,π/2)の周りに折りたたまれた小さなホール的フェルミ面を予言している。しかし、角度分解光電子分光(ARPES)で観測されているのは「途切れている」フェルミ面である。また、ホール係数の異常は折りたたまれた小さなフェルミ面と関連している可能性が指摘されている。小さなフェルミ面の存在を検証することは、高温超伝導体の基底状態を決定する根本的な問題である。高分解能ARPESによる精密測定により、小さなフェルミ面を検出し、擬ギャップ、輸送現象の異常の解明を目指す。特に、最適ドープ領域のLa_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)の角度分解光電子分光(ARPES)において、明瞭な超伝導ピークがノードとアンチノードの中間付近で観測されているが、アンチノード付近には観測されていない。これは、アンチノード方向は小さなフェルミ面の外にあり、超伝導が抑制されているため、と解釈することができる。この解釈を検証するため、当該年度は超伝導が抑制されているアンチノード付近において、LSCO(x=0.14,T_c=35K)の超伝導ピークのシグナルを検出することを試みた。その結果、アンチノード付近の光電子スペクトルに擬ギャップに対応するブロードな構造と、低エネルギー(~15meV)の超伝導ギャップに対応する構造が観測された。超伝導ギャップに対応する構造のエネルギースケールはノード付近のギャップからd-波のギャップを見積もったものに近く、擬ギャップ構造のピーク位置より小さい。この結果は、超伝導ギャップと擬ギャップのエネルギースケールが明確に異なり、2つの異なる性質のギャップが共存していることを示している。
|
Research Products
(3 results)