2011 Fiscal Year Annual Research Report
対称性の破れが誘起するクラスレートの特異な物性とその発現機構に関する理論的研究
Project/Area Number |
22740225
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
兼下 英司 仙台高等専門学校, 総合科学系, 准教授 (60548212)
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Keywords | クラスレート / ゲストイオン / ラットリング |
Research Abstract |
クラスレート化合物の特徴は,籠の中に含まれるゲストイオンの対称性の破れによりその物理的性質が大きく変化することで,ゲストイオンがオンセンターの場合とオフセンターでは全く違う物理的特性を示すことが,フォノン熱伝導の測定から明らかになっている.オフセンターではガラス的な振る舞いが見られるのが特徴で,ラットリングと関係があると考えられている.本研究課題の目的は,クラスレート化合物におけるガラス的な物性の発現機構の解明やラットリングフォノンの物性の理解を目指すものである. 本年度は,ガラス的な振る舞いが,カゴに閉じ込められたゲストイオン単独のダイナミックスを反映したものではないことや,フォノン熱伝導のプラトーの起源は低エネルギーの光学モードとの結合にあることなどを明らかにした.さらに,オフセンター系に対しては、温度に依存しないブロードなスペクトルが観測されるが,これは局所的な対称性の破れと深い関係があることを明らかにした. また,充填スクッテルダイト系やパイロクロア酸化物系で見られるようなラットリングフォノンと多軌道電子系との相互作用を議論するためには,多軌道電子系の物性を理解することが必要であると考え,多軌道の効果が重要な物質系である鉄系超伝導体の物性を調べた.平均場近似および乱雑位相近似を用いてL端共鳴非弾性X線散乱スペクトルを計算して,理論的に予想される特徴を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的についての達成度は、計画通りに進んでいると考えられる.国際研究集会での発表、学術論文としての発表なども順調に行われている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究ではさらに実験研究者との連携を深め、理論的な深化を行う.そして世界の研究者との情報交換を行いさらに広範囲な研究を遂行する.最終的にはこの成果を学術誌に総合報告として発表することを計画している.
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