2012 Fiscal Year Annual Research Report
対称性の破れが誘起するクラスレートの特異な物性とその発現機構に関する理論的研究
Project/Area Number |
22740225
|
Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
兼下 英司 仙台高等専門学校, 総合科学系, 准教授 (60548212)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | クラスレート / ゲストイオン / ラットリング |
Research Abstract |
クラスレート化合物の特徴は,籠の中に含まれるゲストイオンの対称性の破れによりその物理的性質が大きく変化することで,ゲストイオンがオンセンターの場合とオフセンターでは全く違う物理的特性を示すことが,フォノン熱伝導の測定から明らかになっている.オフセンターではガラス的な振る舞いが見られるのが特徴で,ラットリングと関係があると考えられている.本研究課題の目的は,クラスレート化合物におけるガラス的な物性の発現機構の解明やラットリングフォノンの物性の理解を目指すものである.ゲストイオンの位置の違い,すなわち空間反転対称性の局所的な破れに着目し,その背後にある物理的起源の理論的解明を行った. 本研究において特に重要な課題であるTHz振動数モード,すなわち構造ガラスのボソンピークに対応するモードの起源について調べ,光学モードと音響フォノンの混成モードがボソンピークの起源となっていることを理論的に明らかにした.この成果は、内包化合物クラスレートだけでなく,構造ガラスのTHzダイナミクスにおける未解明の問題に対する研究にも大きく貢献できるものである. また,充填スクッテルダイト系やパイロクロア酸化物系で見られるようなラットリングフォノンと多軌道電子系との相互作用を議論するためには,多軌道電子系の物性を理解することが必要であると考え,多軌道性が物性に顔を出す典型的な物質系としてクロミウムと鉄系超伝導体の励起の性質を調べた.平均場近似および乱雑位相近似を用いてL端共鳴非弾性X線散乱スペクトルを計算して,理論的に予想される特徴を明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究の目的についての達成度は、計画通りに進んでいると考えられる.学会等での発表、学術論文としての発表なども順調に行われている.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であるため、これまでに得られた知見の総括・取りまとめを主眼とした研究遂行を行う.今後の研究ではさらに研究協力者との連携を深め、理論的な深化を行う.最終的にはこの成果を学術誌に総合報告として発表することを計画している.
|
Research Products
(4 results)