2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740230
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松浦 直人 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30376652)
|
Keywords | 酸化物高温超伝導体 / スピン揺らぎ / レゾナンスピーク / 磁性不純物Ni置換 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体、そして最近の鉄系超伝導体において最もよく研究されているスピン揺らぎのシグナルは、超伝導状態で顕著に表れるレゾナンスピークである。このピーグの出現するエネルギーは超伝導転移温度と比例関係を示す事から、クーパー対形成に際し、重要な役割を果たしていると予想されている。しかし、その起源については幾つものモデルが提案され、未だ決着がついていない。一方で、高温超伝導体では最近、砂時計型のユニバーサルな磁気励起の分散が報告されており、レゾナンスピークは、砂時計がくびれ、上向きおよび下向きの分散が交差するエネルギー(E_<cross>)にあたる。昨年度、我々はLSCO系最適ドープ組成に対してNiをドープした試料:La_<1.85>Sr_<0.15>Cu_<1-y>Ni_yO_4を用いて中性子散乱を行い、スピン励起に対する磁性不純物Ni置換効果を調べた。その結果、Ni 0%でのE_<cross>=41meVがNi1.5,3,4%置換する事により、それぞれ30,15,0meVに低下することを見出した。超伝導転移温度(T_c)はNi 0%での38.5KからNi1.5,3,4%置換に対しそれぞれ23K,12K,0Kに変化していることから、E_<cross>がT_cに比例して低エネルギー側に顕著にシフトする事が本年度の研究から明らかになった。数%のNi置換は格子のダイナミクスに殆ど影響を与えない事から、E_<cross>の低下は磁性の変化による物であると言える。しかし、本年度の研究計画のもう1つの大きな目標であった次世代パルス中性子源J-PARCのTOF中性子分光器を用いた研究は、単結晶育成が間に合わず行うことが出来なかった。東日本大震災の影響でJ-PARCが稼働しない事が懸念されるが、外国での実験も視野に確実に研究を進め、磁気励起全体に対するNi置換効果を今後明らかにしていきたい。
|
Research Products
(4 results)