2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740236
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
柴田 絢也 東洋大学, 理工学部, 准教授 (20391972)
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Keywords | スピントロニクス / スピン緩和 / スピン軌道相互作用 / スピン・電荷輸送 / スピン起電力 |
Research Abstract |
近年、電流と磁化(スピン)が相互に起因する現象を対象とした研究が盛んに行われている。これは、固体中の電子の電荷さらにスピン自由度をデバイスに応用しようとするスピントロニクス分野の基礎物理として中心的な役割を果たす重要な研究である。その中でも特に、微小な強磁性金属における磁化の電流応答(電流が磁化に与えるトルクや力、それにともなう磁化のダイナミクス)についての理論的実験的研究のが急速に進んでいる。 本研究の目的は、強磁性金属における伝導電子スピンの緩和を重点的に考慮し、その電流磁化応答に与える影響を微視的理論によって明らかにしていくことである。 本年度は、電流によって誘起されるスピントルクについて、スピン・軌道相互作用の影響を考察することが主な目的である。その為に、s-dモデルにおけるゲージ場の方法を用いて、スピントルクの評価に必要な伝導電子スピンの非平衡状態における期待値を、線形応答理論に基づくGreen関数によるダイヤグラムで評価してきた。一般に電流によるスピントルクは、スピン流によって誘起されることが今までの研究により分かっている。本研究においても同様のことが期待されるので、スピン密度の評価の前に、スピン流の評価を行った。これは、skew散乱機構とside-jump機構と呼ばれる2つの機構が関与する。この計算を下に、スピン密度の期待値を計算しスピントルクがこれら2つの機構に基づくスピン流に比例する形で記述されるかを確かめた。結果は、skew散乱機構については予想通りであったが、.side-jump機構については完全に一致していない。これは今後の課題であり、解決後に研究論文としてまとめる予定である。また、スピン緩和の影については、磁性不純物による簡単なモデルにおいて考察した解説が雑誌「固体物理」に掲載されてた。本年度は、震災の影響により年度末に行われる予定の物理学会が中止となり、当初予定していた旅費を繰り越したが、その分は、平成23年9月に行われた物理学会の旅費に充てられた。
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Research Products
(5 results)