2010 Fiscal Year Annual Research Report
酸化状態の連続制御によるジシアノ鉄フタロシアニンの特異な分子磁性の研究
Project/Area Number |
22740239
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木俣 基 東京大学, 物性研究所, 助教 (20462517)
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Keywords | 分子磁性 / 電子スピン共鳴 / デバイス構造 |
Research Abstract |
本年度はまず,特異な分子磁性を示すジシアノ鉄フタロシアニン伝導体TPP[Fe(Pc)(CN)_2]_2のジシアノ鉄フタロシアニン分子の一部を非磁性のジシアノコバルトフタロシアニン分子で置き換えた物質のESR測定を行った.これにより本物質の特異な磁性が,フタロシアニン単分子レベルで発現している可能性が高い事が明らかになった.この結果について学会発表を行った. また,酸化状態の制御に必要なデバイス構造作成の基盤となる要素技術の開発を行った.具体的には,複数の蒸着ポートを持つ真空蒸着装置や有機単結晶作成用のガラス電気炉の立ち上げ,および有機単結晶上への微小電極作製法の開発である.これらの装置を用いて,中心に磁性原子を内包するコバルトフタロシアニン分子を用いた単結晶作成を行い,最大0.8mm程度の結晶を得た.しかし,結晶成長の再現性が乏しいため,今後最適な条件を探索する必要がある.さらに,低次元有機伝導体(DMe-DCNQI)_2Liの単結晶上にサブミクロンスケールの間隔を持つ電極を作成し,電気伝導度の温度依存性や,電流電圧(I-V)特性の測定を行った.この試料については電極間隔に依存したI-V特性の変化や,温度にほとんど依存しない電気伝導度といった興味深い現象を観測している.このような伝導現象は,これまで有機伝導体において観測されておらず,量子トンネル効果のような新規な伝導機構が現れている可能性がある. 電子スピン共鳴測定装置の開発については,当初の発案をさらに進展させ,近接マイクロ波を利用してデバイス構造の肝とも言える表面や界面からの信号を高感度に検出する方法を採用する予定である.この手法を用いた装置開発を成功に導くには微弱なマイクロ波信号を非常に高感度に検出する必要があり,自作の計測系では限界があると考えられるため,ネットワークアナライザを賃貸借して現在装置開発を進めている
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Research Products
(3 results)