2010 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌のミクロな振舞いと集団的パターン形成を繋ぐ階層的秩序形成の理解
Project/Area Number |
22740249
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
櫻井 建成 千葉大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60353322)
|
Keywords | 化学物理 / 数理物理 / 非線形科学 |
Research Abstract |
大腸菌は鞭毛を利用し、特定の化学物質の濃度の高いもしくは低い方向に自ら移動する特徴(走化性)を掛っている。その特徴を利用し様々な機能性秩序を作り出している。本年度は、ロイシンなどに関するレセプター(Tsr)を欠損させた、グルコースやガラクトースを感受するレセプター(TrR)を欠損させた、欠損なしの大腸菌を用いて、スワムリング、同心円状、ドット、ディスク状、同心円+ローブ状などパターンが出現することを確認した。そこでは、初期栄養濃度と寒天の硬さをパラメータとして実験的な相図の一部を明らかにした。特に、初期栄養濃度が高く、寒天が硬い場合に作られる同心円+ローブ状パターンは、走化性大腸菌では、初めて観測されたパターンであり、そのメカニズムの解明が待たれる。 上記の同心円+ローブ状パターンを含め、大腸菌の集団が示すパターン形成の理解は進んでいない。そこで、大腸菌が分裂し増殖する過程の素反応、個々の大腸菌の動きを反映した拡散項、大腸菌の走化性を反映した外力項を加えたモデル方程式を提案した。そのモデルを用いた数値計算では、スワムリングなど一部のパターンは再現されるものの、全てのパターンを再現できる結果を得られなかった。今後、実験結果を反映した個々の大腸菌の振舞いを反映させたモデルの更なる改良が必要である。 また、belouzov-Zhabotinsky反応、ロウソク振動子、発光バクテリア、塩水振動子、ペットボトル振動子などの時間振動の理解とそれらから得られた知見を基にした大腸菌の分裂周期とその素反応過程におけるエントロピー生成との熱力学的解釈を行った。しかしながら、従来の枠組みを越える議論の展開には至らなかった。来年度以降の課題として継続的に議論したい。
|
Research Products
(1 results)