2011 Fiscal Year Annual Research Report
炭素関連物質における電子構造、格子振動および超伝導の解析
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22740252
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
是常 隆 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (90391953)
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Keywords | 電子格子相互作用 / 第一原理計算 / バンドギャップ / 同位体効果 / ダイヤモンド / ナノチューブ |
Research Abstract |
電子格子相互作用によってバンドギャップが変化することを、第一原理計算を用いて定量的に議論するためのコードを開発した。また開発したコードを用いた結果が実験ともよく一致することを示した。具体的には、ダイヤモンドにおいて、バンドギャップ(間接ギャップ)と直接ギャップの温度依存性および同位体効果の計算を行い、それらが実験を定量的に再現することを示した。また、その結果、実験のみでは分からなかったT=0におけるバンドギャップの電子格子相互作用による補正が0.4eVほどあることが明らかになった。これは、バンドギャップの1割弱ほどもある大きな補正であり、GW近似による補正と同じオーダーであるという、非常に重要な結果である。すなわち、バンドギャップの第一原理計算においては、GW近似のみならずこの電子格子相互作用の効果をちゃんと考慮しなければならない、ということを意味している。また、同位体効果の計算から^<12>Cと^<13>Cからなる超格子におけるバンドオフセットが伝導帯の底と価電子帯の頂点で異なることを示した。これは、今後同位体を用いたナノデバイス設計の上で非常に有用な結果であると考えられる。 一方、カーボンナノチューブにおける電子状態の計算も行った。特に、電子格子相互作用によってバンドギャップが変化すること、また、細いチューブにおいては自発的なひねりが存在しうることなどを明らかにした。これらの結果は、最近発展してきているカーボンナノチューブの単離技術により、一つのカイラリティのチューブが得られれば、その物性を議論する上で重要な情報となると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Eliashberg方程式にクーロン相互作用を取り込むテーマについては、進展は限定的であったが、もう一つの柱である、電子格子相互作用によるバンドギャップの変化については、ほぼ目的を達成し、あとは成果をまとめるだけの段階まできている。
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Strategy for Future Research Activity |
Eliashberg方程式にクーロン相互作用を取り込むテーマに集中して、成果を上げたい。やるべきことは見えているので、順調にいけば、期待通りの成果が上げられるものと考えている。
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