2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740253
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
古石 貴裕 福井大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (20373300)
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Keywords | 分子動力学シミュレーション / イオン液体 / 水 |
Research Abstract |
代表的なイオン液体である[bmim]PF_6,[bmim]NO_3,[bmim]Clの分子動力学(MD)シミュレーションを行い、これらの構造と動的性質を調べた。[bmim]は1-butyl-3-methylimidazoliumを表しており、これはイミダゾリウム系の有機陽イオンである。この陽イオンにはシミュレーション中に構造が変化するフレキシブルモデルを採用した。陰イオンは陽イオンに比べ大きさが小さく、シミュレーション中の構造変化は少ないと仮定し剛体分子モデルを使用した。これらの構造を調べた結果、陽イオンと陰イオン間の距離の大きさは[bmim]PF_6、[bmim]NO_3、[bmim]Clの順となり、陰イオンの大きさを反映した結果となった。動的性質としては拡散係数と電気伝導度を求めた。拡散係数はイオンの動きやすさを表す指標であり、平均自乗変位の傾きから求めることが出来る。ランダムウォークを行う粒子の平均自乗変位は時間に対して比例することが理論的に分かっている。イオン液体の拡散は通常の液体の100分の1程度と遅いため、平均自乗変位が時間に対して比例して変化するための時間スケールは10(ns)程度であることがシミュレーションの結果から分かった。拡散係数の大きさは大きい順に[bmim]NO_3,[bmim]PF_6,[bmim]Clとなった。電気伝導度は非平衡分子動力学シミュレーションを行って求めた。このシミュレーションでは、シミュレーション粒子全てに電場から受ける外力を加えた。外力の印加により陽イオン、陰イオンはそれぞれ逆の方向に移動し、イオンの流れが出来る。この流れの速度から電気伝導度を求めた。その結果、電気伝導度は外部電場の大きさに依存して変化することが分かった。これは、通常の塩とは異なった性質であり、イオン液体特有の性質であることが分かった。
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