2010 Fiscal Year Annual Research Report
液体中における横波発生のメカニズム?第一原理分子動力学法
Project/Area Number |
22740257
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宗尻 修治 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (90353119)
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Keywords | シミュレーション / 液体金属 / 動的構造 / 横波 |
Research Abstract |
液体中の横波発生のメカニズムを解明するために、まずは、どのような物質中で横波が発生するのか、原子間相互作用の違いは横波にどのように影響するのか調べる必要がある。このため今年度は、原子間の相互作用が等方的な系である液体ナトリウム、および、共有結合により異方的な相互作用をもつ14属元素液体の液体シリコン、および、液体スズを対象とし、相互作用と横波発生の相関を調べた。原子集団のダイナミクスを精度良く調べるために,原子数64~216個の系で約100ピコ秒の長時間の第一原理分子動力学シミュレーションを行い、これまでにない高い精度で動的構造因子,横波,縦波の振動スペクトルを求め横波の存在について調べた。その結果、液体ナトリウムでは、1ナノメートル以上の波長を持つ横波が存在するが、共有結合により異方的な相互作用を持つ液体スズでは、長い波長の横波は消失し、1ナノメートル以下の短い波長の横波のみが存在した。さらに共有結合性の強い液体シリコンでは横波は存在しないことがわかった。これは、異方的な相互作用のもとでは、各原子の周りの原子の数が少なくなり、原子のずれに対して、もとに戻す力が周囲から働きにくいからであると考えられる。 また、横波と各原子の運動の相関について、視覚的な理解を得るために、横波の可視化法を考案し、横波と原子の運動の関係を示すコンピュータグラフィックスを作成した。液体中の横波の可視化は、これまでに例はなく、横波発生のメカニズムの解明にも役立つものと期待できる。
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