2011 Fiscal Year Annual Research Report
深海の熱水噴出を例とした超臨界水の流れのダイナミクス
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22740261
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小紫 誠子 日本大学, 理工学部, 講師 (90318361)
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Keywords | 超臨界水 / 熱水噴出 / 非圧縮性流 / 数値計算 / 非線形項 / 3次精度上流差分 / 高温熱対流 |
Research Abstract |
前年度において構築した,深海の熱水噴出孔から噴出される超臨界水を数値的に解くための物理・数学モデルを用いて,実際に計算モデルを構築し,既に構築済の非圧縮流体の高速高精度計算コードに組み込んだ.臨界点を超える高圧高温水の熱対流を非圧縮性流体を扱う場合と同様の方法で計算を行うという未経験の試みであったが,構築したモデルが現実に適用可能であることを2次元計算により確認した.この成果について秋のアメリカ物理学会で発表を行っている.一方,極めて温度差の大きい熱対流を数値的に扱うことにおいて,計算上の問題点も明らかになった。高レイノルズ数の複雑な流れを高精度かつ安定的に計算するため,本計算では支配方程式であるナビエ・ストークス方程式に含まれる非線形項に3次精度上流差分法(KKスキーム)を適用しているが,移流の際の波面形状が高精度で維持できる一方で,波面の前後で値が大きくジャンプしてしまうこのスキームの欠点が,本計算において顕著に現れてしまった.すなわち,低温水の中に高温熱水が放出されたときに,流れ場に無視できない影響を与え得る非現実的な低温領域が出現した.この問題は元々3次精度上流差分スキームに潜在していた問題であるので,既に提案されている高精度スキームと強い数値粘性の効果で波面を滑らかにする低精度のスキームを組み合わせたハイプリッドスキームの適用を試みたが,結局,本計算で扱うような物性値の変化が激しい現象を含む広く一般の非圧縮性流体現象においても有用な,シンプルかつ人為的でない自然なスキームを目標に,新しいスキームを開発するに至った.これは従来のハイブリッドスキームの,値がジャンプするような不連続点めがけて数値粘性を与えるのではなく,高精度スキームである3次精度上流差分による数値粘性の,不要な部分への影響を和らげるという考え方に依り,現在検証中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に述べた通りであるが,本計算で用いてきたスキームに潜在していた問題が本計算において顕在化した.本研究課題の主題ではないが,これは非圧縮性流体の数値計算一般の問題であり,このような機会に恵まれたことは逆に幸運と考えている.実際,検証中であるが,この問題を解決すべく開発中の新しいスキームは汎用的で,本研究課題のみならず広く一般の流体計算において適用可能と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の目標であった計算の高速化等,達成できていない項目もあるが,一方で汎用的なスキームの開発など,「寄り道」も重要であった.今後はこのスキームも活用し,3次元高精度計算の実施を目指す.計算上の問題点はこれまでの2次元計算により丁寧に洗い出されているので,より早い時期に計算の3次元化は可能である.しかしながら深海の熱水噴出と同等の条件での実験データ取得は困難であり,観測データも限られていることから,より低温領域での熱対流によるモデルの検証を予定している.
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Research Products
(1 results)