2010 Fiscal Year Annual Research Report
Lyapunov指数の一般化と非平衡非定常現象への応用
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22740262
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
秋元 琢磨 慶應義塾大学, 理工学研究科, 助教 (30454044)
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Keywords | 統計力学 / 数理物理 |
Research Abstract |
平成22年度は、1.無限測度を持つ1次元写像における力学的不安定性の特徴付け,2.決定論的遅い拡散における無限測度の役割,3.disorderのある連続時間ランダムウォーク(CTRW)における輸送係数の本質的な揺らぎ、を明らかにした。 1.カオス性の強さを表すリアプノブ指数を弱いカオス性にも適当できるように一般化し、グローバルな不安定性とローカルな不安定性のペアを提案し、力学的不安定性を統一的に特徴づける事に成功した。この結果は学術誌Chaosに出版され、大きなインパクトを与えた。(最も多くダウンロードされた論文の一つに選ばれた。) 2.遅い決定論的拡散では、長時間平均で定義された拡散係数がミッタク・レフラー分布(ML分布)に法則収束する、つまり、拡散係数が軌道毎に異なりランダムになるが、その分布関数は普遍的な分布関数(ML分布)に収束する事を無限測度エルゴード理論により示した。この結果は、Phys.Rev.Eに掲載され、遅い拡散過程における無限測度の役割を明らかにし、非平衡統計力学の新たな展開を開きつつある。 3.CTRWはランダムウォーカーが次に動くまでの時間が確率変数となっているランダムウォークである。トラップ時間分布の平均値が発散するとき、CTRWにおける平均2乗変位は遅い拡散を示す。細胞内のモデルでは、トラップ時間は独立同一分布ではなく、各格子点に対して固定された時間の待ち時間を持つ。通常のCTRWでは長時間平均で定義された拡散係数が本質的にランダムになり、ML分布に収束する事が知られているが、このモデルでも拡散係数はランダムとなり、特に1次元では、拡散係数の分布が、修正されたML分布になることがわかった。この結果は、Phys.Rev.Eに掲載され、細胞内輸送における拡散係数のランダム性の起源を与えるものとなった。
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Research Products
(7 results)