2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22740265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 由紀 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (00456261)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 冷却原子 / ボース・アインシュタイン凝縮 / スピンテクスチャ / トポロジカル励起 / 双極子相互作用 / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
平成24年度の成果は以下の4点である。また、下記に加えて、当該分野のレビュー論文を執筆した。 [1] 1次および2次ゼーマンエネルギーを変えてスピノールBECの有限温度での磁性を調べた結果、凝縮成分とのコヒーレントな散乱を通して、非凝縮成分でも異なるスピン成分間にスピンコヒーレンスが生じることがわかった。また、この非凝縮成分のスピンコヒーレンスが相図を決定する上で重要であることがわかった。 [2] 従来のホモトピー理論による渦の分類では渦芯に関する情報は得られないため、渦芯近傍での秩序変数空間のトポロジーに着目して、渦芯構造を分類できるようホモトピー理論を拡張した。それをスピノールBECに適応した結果、渦芯を分類するトポロジカル不変量が定義できることがわかった。 [3] 人工ゲージ場によりスピン軌道相互作用するBECの基底状態を対称性の考察により求めた。2次元のSO(2)対称性を持った系では、その部分群であるサイクリック群の対称性を持った状態が実現する。具体的にスピン1/2, 1,および2のBECに対して基底状態を求めた結果、三角格子、四角格子、六角格子、カゴメ格子といった様々な渦格子状態が現れることがわかった。 [4] スピン1のスピノールBECに対して2次の摂動展開であるベリアエフ理論を適用した結果、マグノンの有効質量が量子揺らぎによって増大し、その増大率は強磁性相とポーラー相で同一であることがわかった。また、マグノンの寿命はフォノンの寿命に比べて非常に長いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的はスピノール・ダイポールBECの①磁性、②多体効果、③トポロジカル励起、の3点を解明することであった。①については、今回、有限温度における磁性とそれを決める機構を明らかにした。特に、非凝縮成分のスピンコヒーレンスが凝縮成分の磁性を決める上で重要になっていることがわかった。②については、双極子相互作用がない場合に、高次の摂動展開による手法で準粒子の振る舞いを調べた。③については、渦芯の構造を分類する手法を確立した。また、双極子相互作用と同様にスピン軌道相互作用の存在する人工ゲージ場下のBECにおいて、相互作用により自発的に渦格子構造が現れることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、スピン内部自由度を持ったBEC(スピノールBEC)において、双極子相互作用のもたらす新奇な物性を研究することが目的である。本研究のこれまでの成果から、スピノールBECにおける多体効果は、双極子相互作用のない場合においても相転移点のシフトなど非自明な効果をもたらすことがわかってきた。そこで、多体効果に関しては双極子相互作用のない場合を重点的に解明する。特に、量子揺らぎによる相転移点のシフトや準安定状態の有無を明らかにする。 また、強磁性相互作用するBECはスピントロニクスの分野とも類似性が多く見出されるため、ドメインの成長則などの具体的な比較を行う。特に、スピン流や超流動流の存在が強磁性金属との定性的な違いをもたらすかを明らかにする。
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Research Products
(14 results)