2010 Fiscal Year Annual Research Report
DNA鎖の転写反応におけるねじれの伝搬と非平衡カイラルダイナミクス
Project/Area Number |
22740274
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和田 浩史 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (50456753)
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Keywords | 弾性フィラメント / 非平衡現象 / DNA転写反応 / ヌクレオソーム / ねじれ |
Research Abstract |
すべての生命にとってDNAの転写反応は最も基本的かつ重要な細胞内活動のひとつである。遺伝情報の転写はDNAとRNAポリメラーゼをはじめとする種々のタンパクとの複雑でダイナミックな相互作用からなり、RNAポリメラーゼIIは活発にDNAを引っ張り、ねじり、DNAのスーパーコイル形成や構造転移を誘起する。本研究では転写に際にDNAに導入されるtwistがどのように伝搬し、DNAのトポロジカルな変化やヌクレオソーム構造の不安定化を引き起こすかという問題をメカニクスの視点から理論的に考察する。 初年度にあたる22年度はまず、semiflexible polymerの一端からトルクの形で導入されたtwistがどのように輸送されるのかという基礎的な問題を取り上げ、それを解析的および数値的に詳細に調べた。とりわけ、ねじれによって駆動されるフィラメントのbuckling現象に注目した。Microスケールのフィラメントの運動では、まわりの溶媒流体の粘性効果が支配的になるため、エネルギー散逸を最小にするような配置を実現しようとする。そのとき、twist-writhe転換という幾何学的な効果のためにフィラメントは特異な形状をとる(whirling)が、その現象のメカニズムをエネルギー的また幾何学的な視点から明らかにした。(この成果は23年度に論文として公表した。) さらに、別の基礎的側面を明らかにしておくため、熱平衡におけるゲノムスケールのDNAの構造についても実験グループと協同で考察を行った。基盤上にdepositeした環状のDNA鎖の形状の統計的性質を特徴づけるユニバーサルなスケーリング公式を導出し、それを実験結果と比較することで非常によい一致を得た。この成果は22年度に論文として発表している。
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Research Products
(2 results)