2011 Fiscal Year Annual Research Report
DNA鎖の転写反応におけるねじれの伝搬と非平衡カイラルダイナミクス
Project/Area Number |
22740274
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和田 浩史 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (50456753)
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Keywords | 弾性フィラメント / 非衡現象 / DNA転写反応 / ヌクレオソーム / ねじれ |
Research Abstract |
DNAに書き込まれた遺伝情報を読み出し、タンパク質を合成するプロセスは、あらゆる生物にとってその生命活動を維持するためのもっとも基本的なプロセスである。このきわめて重要なプロセスの第の一段階が、RNAポリメラーゼによるDNA遺伝情報の読み出し(mRNAの合成)である。真核細胞では、RNAポリメラーゼがクロマチン構造中にタイトに折り畳まれたDNAの必要箇所にどのようにアクセスし、どのように読み出しとmRNAの合成反応を行っているのか、その全体像は未だに曖昧としている。 転写反応の開始や制御には、DNAのスーパーコイリング転移やねじれの伝搬が深く関わっていることが示唆されている。本研究の目的は転写ダイナミクスの文脈において、まげとねじれと引っぱり弾性を持つフィラメント(semi-flexible polymer)におけるカイラルな力学的摂動、ねじれの効果を解析的および数値的なアプローチを組み合わせて明らかにすることである。 本年度は昨年の成果に加えて、DNAの局所的なねじれに依存したポテンシャルを導入し、これを用いてDNAとヌクレオソームのモデル複合体を計算機上で作成することに成功した。さらにこれを用いてRNAポリメラーゼによって外部から加えられたトルクがどのようにこの複合体の安定性とダイナミクスを変化させるかを調べた。とくに十分に大きなトルクによって複合体のunwrappingがひと巻きずつステップワイスにおこり、さらにカイラリティの逆転した複合体が出現する。外部トルクに誘起されるカイラルフリップや準安定状態の可能性は近年の実験で示唆されていたが、初めてモデル計算によって示された。これらの成果はクロマチン構造のトルクに対する強いplasticityを裏付ける。上記成果のの部は今年度に出版済ろであるが、さらに詳細な結果も現在、発表の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にDNAのモデルであるsemi-flexible polymer中のねじれの伝搬に関する基礎的研究を遂行し、これを2年目にあたる今年度に出版することができた。さらに今年度は、シミュレーションによってモデルヌクレオソームを安定的に構成することに成功し、外部トルクによってunwrappingおよびreverse wrappingが引き起こされることも発見できた。ほぼ申請書に記載したタイムテーブル通りに成果が得られており、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度にシミュレーションから得られた新規な結果(上記の記述参照)の成果をさらに説得力のある形でまとめ論文として出版するには、より多くのパラメータに対するデータと理論的な考察が不可欠である。また今年度の研究から得られたreversed chhlalityをもつモデルヌクレオソームは、生物において示唆されているクロマチン構造のplasticityと直接的に関わっていることが強く期待されるが、そのバイオロジカルな意義をさらに明らかにするには生物サイドからのいっそうの考察も必要である。これらを最終年度に遂行していく計画である。
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Research Products
(4 results)