2010 Fiscal Year Annual Research Report
超高速コヒーレント分光で検証可能な励起エネルギー移動の包括的理論
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22740276
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斉藤 圭亮 京都大学, 生命科学系キャリアパス形成ユニット, 特定研究員 (20514516)
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Keywords | 励起エネルギー移動 / 光合成色素蛋白質 / コヒーレンス / 電場変調吸収分光 / 四光波混合分光 / カロテノイド / 量子マスター方程式 |
Research Abstract |
本研究の目的は光合成色素蛋白質で起こっている高効率な励起エネルギー移動(励起移動)過程を理論的に記述し,実験的検証の枠組みを確立することである. 励起移動の理論的な記述に関して,次の成果を得た:コヒーレントとインコヒーレントのそれぞれの極限に対応した別の従来型理論が存在するが,正しい記述のためにはこれらの理論を包括した理論が必要である.そのための足がかりとして,2つの極限をつなげる方法を研究した.両極限に対応した別理論は,ハミルトニアンにおける非摂動項と摂動項の選び方のみの違いで,摂動展開による量子マスター方程式の枠組みから共通に導かれ,摂動項の選び方が鍵となることに着目した.摂動項はその大きさが小さいほど近似が正当化されると期待される.このことから,摂動を最小にするように非摂動項を表現する基底を回転させることにより,両極限をなめらかにつなぐ速度定数の表式を得た. 励起移動を実験的に検証する手段として非線形光学分光がある.この実験に関する理論的研究を行い,次の2つの成果を得た:(1)定常的な非線形光学分光のひとつに電場変調吸収分光がある.この実験に関して理論的基礎付けを行い,従来の2つの別理論が実は同一であり,共通の枠組みで記述できることを明らかにした.さらに,従来理論のひとつについてより適用範囲の広い新しい表式を得た;(2)動的な非線形光学分光のひとつに四光波混合分光がある.この実験に関して,電子状態間のコヒーレントな結合と,電子と振動の相互作用の高次効果を考慮に入れた理論を開発した.この理論を光合成色素のひとつであるカロテノイドに適用し,カロテノイドの特異な性質を明らかにした.
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