2011 Fiscal Year Annual Research Report
種々の環状高分子のトポロジー効果と分子鎖の拡がりの相関
Project/Area Number |
22740281
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 次郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 研究機関講師 (40415047)
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Keywords | 環状高分子 / シミュレーション / バルク / 溶液 / 拡がり |
Research Abstract |
本研究は、分子末端を持たず、もっとも単純で美しい形の高分子である環状高分子の物性について理論とシミュレーションで知見を得ることを目的とする。2011年度は、溶融体中のTrivial-ringポリマーの拡がりについて、シミュレーション結果で得られた拡がりの大きさと、中性子散乱実験の結果との比較を行い、両者がよく一致することを見いだし、論文で報告した。また、希薄溶液中で非摂動状態となるθ温度をlinearとTrivial-ringで比較し、Trivial-ringの温度が低いことをシミュレーションで見いだし、考察を与え、論文で報告をした。 このように、高分子科学において重要な指標である「溶融体における拡がり」,「θ温度」についてすでに確立しているlinearポリマーと異なった振る舞いを持つことを明らかにした。これらは鎖のトポロジーが鍵になっていることが学術的に意味がある。特に、非摂動状態の閉じた曲線(Phantom-Chain-ring)であり、かつ、トポロジー転移が起こらないという矛盾した状態をシミュレーションで設定し、トポロジー効果がどのように発現するかを論じることができた(米国数学会年会で招待講演)。 上記と平行してより効率的なシミュレーションアルゴリズムの研究開発も行っている。それは、Face-centered cubic lattice(FCC)格子上でシミュレーションをする方法であるが、この方法で上記の研究成果を得ており、さらに、Trans Locationのアルゴリズムの組み込みについて、研究を進めている最中である。 以上のように、本研究課題は計画に沿って順調に遂行さ.れており、論文発表も行われ、成果を上げつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環状高分子のトポロジー効果が、シミュレーション/理論的考察から明らかにされてきている。また、新規なシミュレーションアルゴリズムを研究開発し、より精密な議論/考察を行うことができている。このように、シミュレーションアルゴリズムの開発と物性研究の両面で良い相乗効果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
トポロジー効果については、もっとも単純なTrivial-ringだけでなくsingle-knottedやcatenated-ringについてもシミュレーションを行い、トポロジーと物性のより詳細な相関を明らかにする予定である。また、ringとlinearの混合系についても考察を行う。 シミュレーションアルゴリズムについては、ソフトマターに限らず、どの分野にも適合すると考えられる。より広範な応用を模索したい。
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