2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞分裂の過程で形成される膜融合状態におけるナノ相分離構造
Project/Area Number |
22740282
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
山田 悟史 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (90425603)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 生体模倣膜 / 自己組織化 / 相分離 / リン脂質 / X線・粒子線 |
Research Abstract |
細胞やその小器官の仕切りとなる生体膜はリン脂質と呼ばれる両親媒性分子でできている。生体膜は表面の細孔や膜自体を分離・融合によって物質の流れを制御しており、その際のリン脂質膜の変形挙動を理解することは、物質輸送のメカニズムを理解する上で重要な知見といえる。本研究では、このリン脂質膜の融合・分裂を理解するために、通常のリン脂質フォスファチジルコリン(PC)とリン脂質の炭化水素鎖を極端に短くしたPCを混合した系のナノ構造変化について、特にリン脂質の相分離との関係に着目し、研究を行った。一般的に相分離は温度によって制御が可能であるためこれをパラメータとし、中性子小角散乱を用いた経時変化測定により構造変化を観測した。その結果、相分離を強くするに従って直径数十nmの単層膜ベシクルの表面に細孔が形成すること、さらに相分離が強くなると細孔から開口してディスクへと変形すると共に、ディスク同士が融合した後により大きな単層膜ベシクルへと変形することが明らかになった。次に、鎖長を極端に短くしたPCと共にフォスファチジルエタノールアミン(PE)と呼ばれる物質を通常のPCに添加した系に着目した実験を行った。PEは生体内で細胞分裂の際に分裂面に局在化することが知られているリン脂質で、膜融合を促進すると考えられている。膜融合が生じるためにはリン脂質の二分子膜同士の膜間距離を狭める必要があるため、リン脂質二分子膜の膜間距離を湿度制御により変化させ、膜融合の様子をX線斜入射小角散乱を用いて観測した。その結果、PEのみが含まれる場合は膜間が狭まると膜融合が生じるのに対して、これに鎖長の短いPCを加えていくと膜融合が抑制されること、さらにPEを完全に鎖長の短いPCに置き換えると膜間が広い状態でのみ細孔が形成されることを示唆する結果が得られた。この違いはPEと鎖長の短いPCの分子形状の違いによると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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