2011 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界流体中のコロイド結晶に現れる超長距離斥力相互作用
Project/Area Number |
22740284
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小山 岳人 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 研究員 (50533858)
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Keywords | 超臨界流体 / コロイド分散系 / 密度揺らぎ / コロイド結晶 / 粒子間相互作用 |
Research Abstract |
物質問の相互作用は、あらゆる(相)転移現象を支配する起源であり、これを理解することは物理学の中心的課題の一つである。近年、超臨界流体中のコロイド2次元結晶において、臨界点近傍でコロイド粒子間に未知の超長距離斥力相互作用が働くことが見いだされた。既存の理論では説明できないこの現象の発現機構を理解すること、特に超臨界状態における分散媒の密度揺らぎによる効果を明確にする事がこの研究の目的である。平成23年度は、前年度に得られた未知の斥力相互作用の発現条件に関する結果を基礎として、超長距離斥力相互作用の現象発現の要因をより具体的に見極め、その発現機構を明確にする実験を行った。まず、前年度に用いたエタノール中にシリカ粒子結晶を形成した系において、この未知の斥力が、最も有力と考えられた静電斥力であるかどうかを検証した。これにより、電解質の分散媒への添加が、斥力を弱められることが明らかとなり、この斥力が粒子表面電荷による静電斥力であることを明確にすることができた。一方、前年度の結果である、この斥力が密度揺らぎにより誘起される、ということをより明確にするため、別の分散媒であるアセトンを用いた実験を行ったところ、全く同一の現象が発生することが明確となった。これらの実験により、超臨界流体中では、密度揺らぎが粒子の表面電荷を誘発し、これに伴って静電斥力が現れるということが明確となった。本研究を通じて、これまで省みられなかった媒質の物性が、コロイド粒子間の相互作用に与える本質的な影響を新たに明確にすることができた。これにより、コロイド科学の基礎的知識の拡大に貢献できるものと考えている。そしてこの現象は、フォトニック結晶など、現在注目の応用分野において、コロイド結晶の能動的制御というこれまでにない技術の基礎となる可能性を有している。
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