2010 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯低気圧の発生・急発達における対流活動の役割に関する観測的・数値的研究
Project/Area Number |
22740308
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
沢田 雅洋 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (90466524)
|
Keywords | 台風 / 減災 / 数値シミュレーション / 急発達 |
Research Abstract |
熱帯低気圧(以降、台風)の発達・急発達に好ましい環境場を調べるため、2つの再解析データ(JRA25/JCDASとERA-interim)をそれぞれ32年分(1979-2010年)と22年分(1989-2010年)と海面水温データを29年分(1982-2010年)を整備した。また、台風の発達・急発達に重要となる対流活動との関係も調べるため、衛星による2つの降水データ(TRMMとGSMaP)をそれぞれ13年分(1998-2010年)と4年分(2003-2006年)を整備した。台風の発生時と急発達時、における台風周辺の環境場(下層の循環場、鉛直シア、海面水温や安定度など)を切り出し、それらを重ね合わせることで特徴を抽出した。顕著な急発達事例について非静力学モデルを用いて、熱帯低気圧の発生・急発達時における対流活動と環境場の相互作用について調べた。また、水平解像度の感度を調べるため、8,6,4,2km格子を用いた再現実験を行い、台風進路にはほぼ影響は見られなかったが、急発達や最大到達強度の再現には水平解像度の高解像度化が重要であることを示した。急発達の前の構造について調べると、高解像度化するにつれて下層の吹き込みが強まり、軸対象構造への遷移が早まる傾向が分かった。さらに、台風の急発達過程における雨水の蒸発冷却に関する感度実験を行い、雨水の蒸発冷却を除く実験では、蒸発冷却を含む実験に比べて台風は急発達し、雲物理過程の最適化が重要であることが示唆された。急発達の予報には初期値の鋭敏性が指摘されているが、モデルに含まれる物理過程にも大きく影響することが示された。 これらの結果についてまとめて、2011年6月2-3日に行われた超高精度メソスケール気象予測研究会(神戸)にて発表を行い、急発達の再現に関わる要因について意見交換をした。
|