2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740310
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 裕亮 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70415991)
|
Keywords | 気象学 / 大気モデリング |
Research Abstract |
ZM-gridを採用した浅水モデルについて更なる高精度化を進めるとともに、これまでの成果について論文化をすすめた。前年度に開発した正20面体格子に対して高精度・高解像度のPiecewise Parabolic Method (PPM法)を拡張する新手法に関する論文が米国気象学会の論文誌Monthly Weather Reviewに受理・掲載された。また、2次関数を利用して格子内の変数分布を再構築する3次精度・4次精度の新移流スキームについてもMonthly Weather Reviewに論文を投稿済みである。ZM-grid法では高度を6角形の中心に定義し、速度を6角形の頂点に定義するが、6角形頂点での傾き項の精度が依然として不十分であり、コリオリ項と水平気圧傾度項のバランスの破れが原因となって偽の流れが起こる問題が残っている。そこで、これまでの線形内挿に基づく方法ではなく、2次関数を利用して気圧(浅水モデルでは高度)分布を再構築する手法を考案した。今までのところ、プログラムの実装に問題が残っており、想定していた精度を達成できていないため、プログラムの改良を進めている。また、これまでに構築したプログラムでは京コンピュータやFX10のようなスカラー型の計算機で計算効率が不十分であるという問題が明らかとなったため、計算アルゴリズムや並列化アルゴリズムの再検討を行うなど、プログラム全体の再構築を進めており、その結果、並列部分などで大幅な計算効率の向上を達成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定に比べて研究の進捗に若干の遅れを生じている。遅れた原因は2つである。まず一つ目は、研究計画当初には想定していなかった高精度計算法の開発に成功したことである。開発した計算手法は、高精度である一方で、その実装のために開発してきたプログラムを大きく拡張する必要があった。プログラムの書き直しと、計算手法そのものの精緻化、およびその論文化に多くの時間を費やすことになった。原因の二つ目は、浅水モデルの段階で想定外の問題に直面したことである。浅水モデル構築後、速やかに3次元化に取り組む予定であったが、詳細なテストの結果、傾き項の離散化に1次精度の手法を用いることで、無視できない大きさの偽の流れが生じることが明らかとなった。この問題を解決するべく、新しく2次精度の手法を考案するに至ったが、計算アルゴリズムの検討とそのプログラム実装に時間を要した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、当初目的としていた3次元大気力学コアの開発の達成を目指す。これまで開発してきた高精度移流スキームと2次精度傾き項を用いることで、水平離散化に関しては既存の問題を克服できたと考えている。気圧座標系を用いた静力学方程式系の力学コアと高度座標系を用いた非静力学方程式系の力学コアの開発に順次取り組み、気候モデルMIROCと全球雲解像モデルNICAMとの研究協力につなげる。
|