2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740314
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉川 裕 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (40346854)
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Keywords | 吹送流 / ラージエディシミュレーション / 熱フラックスの影響 |
Research Abstract |
吹送流の季節変動特性とその力学機構を明らかにするため、対馬海峡を想定したラージエディシミュレーションを行った。初めに夏季および冬季の月平均熱フラックス(一定値)を与えて実験を行った結果、夏季は観測と概ね一致するものの、冬季は観測に比べて流速が半分以下であった。冬季に見られた大きな相違は、観測された吹送流が冬季の平均熱フラックスから期待されるほど鉛直混合していないことを意味し、海洋混合層での運動量輸送を考える上で極めて重要な結果と言えた。 そこで観測と実験の差の原因を明らかにするため、月平均熱フラックスに日周変動を加えて実験を行った。すると、日周変動は夏季には大きな影響を及ぼさないものの、冬季には加熱時に吹送流が表層にとどまることで生じる加速効果が、加熱時間の短い冬季の方がむしろ顕著であり、その結果日周変動がない場合に比べて倍程度にまで流速を大きくしうることがわかった。この結果は、観測結果をよく説明するものであった。 そこで、様々な月平均熱フラックスおよび日周変動振幅を与えた実験を行い、パラメター依存性を調べた。その結果、熱フラックスの平均値の季節変化と熱フラックスの日周変動の季節変化は、吹送流の季節変動に対してはどちらも同程度に重要であることがわかった。従って、吹送流を精度良く再現するには、熱フラックスの日周変動を考慮することが重要であることが分かった。 最後にこれらの結果を再現しうる乱流混合スキームの検証・改良に向けて、まず最近の大気境界層における研究をレビューした。その結果、海洋で広く用いられているMellor and Yamada(1982)のスキームは、密度成層時に再現性に問題があることが分かった。吹送流の季節変化を再現するうえでは極めて重要な問題であるため、大気境界層における先行研究を精査し、海洋モデルにおいても同様の効果がありうることを確認した。
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Research Products
(4 results)