2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22740320
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中川 広務 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (30463772)
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Keywords | 分光 / 赤外 / 惑星大気 / 高分解能 / ヘテロダイン |
Research Abstract |
<外部共振部の開発> つくば国立環境研究所フーリエ分光器ならびに学内所有モノクロメータを用いて、H22年に開発した外部共振部について、単波長発振モードに移行する条件を定量的に調べた。その結果、グレーティング以外の光学素子でフィードバックがかかる現象が存在することが判明し、この場合波長を連続的に変化させることが難しいことがわかった。検討の結果、レーザ窓材などフィードバックを生む素子を光軸に対して角度をもたせることで抑制することができた。 <波長安定化システムの開発> H22年に開発したガスセルを用いた波長安定化システムの開発に成功した。長さ15センチのガスセルにエチレンガスを封入し、真空ポンプ等で1-10Torr程度の圧力に調整する。ガスセルを通過したレーザを検出し、その吸収の底の位置を参照することで、レーザの発振波長にフィードバックをかけ発振波長を安定化させる。温度制御のみでは70MHz程度の波長安定度だったのが、本システムを用いることで20MHz以下にまで向上した。これは達成目標である火星メタン観測に十分の波長分解能であり、ガスセル内の圧力を最適化させることで、更なる安定化が期待できる。 <外部共振器を実装する分光器の開発> H22年まで長年開発を進めてきた中間赤外ヘテロダイン分光装置の初号機が、本年の実験結果ならびに国内試験観測結果により目標性能に達し、完成することができた。ノイズレベルであるシステム雑音温度は、10μで量子雑音限界の2倍程度で驚愕の3000ケルビンという低ノイズ・高感度を達成することができた。学内サントラッカーを用いた地球大気オゾン・二酸化炭素スペクトルの取得にも成功し、ほぼ期待どおりのS/Nを達成することができた。東広島天文台のかなた望遠鏡に実装することで月背景にした地球大気オゾンスペクトルを取得することができ、また金星とのヘテロダイン信号受信にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外部共振器、波長安定化システム、そして外部共振器を実装する分光装置の開発はそれぞれ順調に進展している。但し、当初予定していた飯館望遠鏡への実装は福島原発の影響により実施困難な状況になり、代替案として東広島望遠鏡のナスミス焦点に実装させていただくことで、当初の目標をおおむね達成することができた。使用時間の制約上、総合的な性能評価は一度のみであったが、更なるアラインメントの改善等を達成していくことが望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、当初の予定にはなかったが上記理由により飯館望遠鏡のハワイ・ハレアカラ山頂への移設計画を進めている。順調に進めば、11月下旬に移設がほぼ終了する予定であり、クーデ焦点に本装置を実装するための設計・最適化作業を開始した。日本国内とは比較にならない好天候条件下で中間赤外観測を実施できる絶好の機会であり、ハワイ山頂での火星メタン・H2O2観測を目指し開発を進める。波長安定化システム、実装する分光装置本体は当初の計画以上に進展しているため、ハワイ山頂飯館望遠鏡へ最適化・小型化・自動化することに専念する。外部共振部は、本年度に明らかになった余計なフィードバックを除去し、連続可変可能とするため外部共振距離・駆動電流・グレーティング角度をカップリング調整可能なシステムをピエゾ素子によるフィードバックで実現する。
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Research Products
(5 results)