2011 Fiscal Year Annual Research Report
地上・衛星の多点観測データを用いた深内部磁気圏の発達・擾乱に関する総合解析
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22740322
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
能勢 正仁 京都大学, 理学研究科, 助教 (90333559)
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Keywords | 磁場双極子化 / リングカレント / 磁気嵐 / イオン組成 / 非断熱的加速 / 内部磁気圏 / サブストーム / Dst指数 |
Research Abstract |
今年度は、平成22年度の解析から得られた結論、すなわち「リングカレントの発達には、その場に存在していた低エネルギー粒子が周期数秒程度の電磁場擾乱によって受けるローカルな非断熱的加速が重要な役割を果たしている」ことについて、計算機シミュレーションの手法を用いて検証を行った。具体的には、磁場双極子の際に現れる周期数秒程度の電磁場擾乱を、ドリフト励起電磁イオンサイクロトロン不安定によるものと考え、このプラズマ不安定性の線形解析結果から電磁場擾乱の計算機上での再現を行った。再現された擾乱が、衛星観測のものと似ていることを確認した上で、この擾乱中でイオンがどのような加速を受けるかについて、単一粒子軌道トレーシングの手法によって調べた。その結果、数eVの酸素イオンはリングカレントのエネルギー帯の数十keV程度まで加速されうることが明らかになった。逆に、数eVの水素イオン(プロトン)は、酸素イオンほど有効に加速されないことも分かった。これらの結果は、実際に人工衛星で観測されるイオンの特性とよくの致する。 同時に、別の研究目的である「Dst指数に含まれる内部起因擾乱・外部起因擾乱の割合変化」についても解析を行った。その結果、内部起因電流の効果は、従来の研究で報告されてきたようなDst指数の約25%で一定という単純なものではなく、Dst指数の発達・減衰の時間的な変化割合に依存するというもっと複雑なものであることが明らかになった。これは地球が有限な電気伝導体であることを考慮すれば説明することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の「研究の目的」では、(1)Dst指数に含まれる内部起因擾乱・外部起因擾乱の割合変化、(2)L~4での磁場双極子化に伴うリングカレントの発達、(3)波動-粒子相互作用によるイオン流出に伴うリングカレントの減衰、の3つの研究テーマを設定した。そのうち、(1)と(2)については十分な解析と考察を行い、研究が進展した。 (2)では、既に2編の査読付き論文が出版され、(1)では、論文の草稿を準備しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、電磁場擾乱によるイオン加速に関して、計算機シミュレーションのパラメータを変えるなどしていろいろな条件での現象の再現を行い、電磁場擾乱の役割を詳細に解明していく予定である。また、深内部磁気圏を飛翔するPolar衛星の磁場・粒子データを解析できる環塊を整えることができたので、この衛星データを用いて、同様に深内部磁気圏での磁場双極子化とそれによるリングカレントの発達、酸素イオンフラックスの増大について解析を行う。波動-粒子相互作用によるイオン流出に伴うリングカレントの減衰に関しては、THEMIS衛星のデータを用いて解析を行う予定である。
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Research Products
(9 results)