2011 Fiscal Year Annual Research Report
下部地殻部分溶融体のレオロジーと弾性波速度に関する実験的研究
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22740328
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
武藤 潤 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40545787)
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Keywords | 地殻のレオロジー / 下部地殻 / 岩石変形実験 / 弾性波速度 / Griggs試験機 / 地震発生 / 格子定向配列 / テクトニクス |
Research Abstract |
東北大学現有のGriggs型試験機を用いて、下部地殻を構成する主要構成鉱物(灰長石)の変形実験を行った。人工的に合成した灰長石多結晶体に、水を加え、そのレオロジー特性に及ぼす水の効果を調べた。含水量0.2wt%の実験では、ドライの試料に比べて、顕著な軟化は見られない(両者とも1GPa,900C,10^<-5>/sにおいて差応力800MPaで降伏)が、鏡下においては、円筒形試料の表面部分にのみ著しい塑性変形が認められ、石膏検板下で干渉色の変化が認められた。含水下にて試料表面に拡散した水が、局所的な塑性変形を捉し、塑性歪が表面に集中したと考えられる。そこで、回収試料を顕微赤外分光法を用いて、含水量を測定し、電子顕微鏡および電子後方散乱分析(EBSD)を用いて、化学組成と微細組織を観察した。赤外スペクトルから、波長3400cm^<-1>に特徴的な吸収を持つゾイサイトのスペクトルが得られた。また電子顕微鏡観察から、塑性変形部の粒界にSiO_2組成のメルトが存在し、ゾイサイトの晶出も見られた。しかし、ゾイサイトの形態には定向配列がみられず、変形に寄与せずに成長しているように見える。またEBSDを用いた灰長石の結晶方位測定から、塑性歪の集中した部分はランダムなLPOパターンを示すことが明らかになった。変形実験は灰長石+水の安定領域で行われたが、差応力下で軸圧縮方向のみ高圧側のゾイサイト+カイアナイト+SiO_2メルトの領域に進み、局所的な軟化を引き起こし、塑性変形が集中したことが推定される。また、次年度以降の弾性波速度測定実験にむけて、圧電素子の選定およびアセンブリの開発を開始した。金蒸着した圧電素子を金属円柱に貼り付け、反射波の周波数特性を調べたところ、2MHzで最も反射が強くなることが観測された。今後は、小型化した圧電素子をアセンブリに導入し、高圧・低温(400度程度)での弾性波速度測定法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、下部地殻岩石を対象に、そのレオロジーと弾性波速度特性を高圧下で同時測定することで、直接評価することを最終目的としている。それに対し、これまでの達成度は、中間年度において、まだレオロジー的な実験および試料の解析のみしか行えていない。これは、下部地殻条件生成の難しさや含水条件での変形実験の難しさ(含水量のコントロールや部分溶融の生成といった問題など)といった技術的な側面に加え、下部地殻条件で起こる変形-反応のカップリングという物理現象の難しさにも起因している。今後は、詳細に、部分溶融条件などを探っていくことで、部分溶融や含水の効果を定量的に評価していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、人工灰長石多結晶体の含水下での塑性変形実験から、水の拡散に伴い部分溶融と局所的な軟化が起こることが明らかになったが、部分溶融と水のレオロジー特性に及ぼす直接的な効果は未だ分離できていない。そこで、今後は、灰長石+水の安定領域内(部分溶融させない条件)で試料を長時間保持し、試料中に水を導入させ灰長石を軟化させることで、強度に対する水の効果だけを抽出していく。また、部分溶融の起こる封圧温度条件(灰長石+水の安定領域外)で、変形実験を行い、部分溶融のみの効果を抽出していく。これにより、下部地殻中で起こる変形と反応の効果を独立に抽出し、評価できると考えている。また、弾性波速度測定用のアセンブリを開発し、速度測定の実験可能温度領域の拡大を目指す。
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Research Products
(15 results)