Research Abstract |
土壌の化学組成から,化学風化度の程度を抽出して,その土壌の生成場の気候と化学組成の関係を解析してきた.本年度は,1435個の多様な気候条件下で生成された土壌の化学組成を,文献調査によって収集した.申請者が新たに提唱した化学風化指標(w値)によって,これらのデータを再評価すると,寒冷または乾燥気候帯の土壌は低いw値をもち,温暖化・湿潤化するにしたがって,連続的にw値が上昇することがわかった.この結果,土壌の化学組成のみによって,生成場の気候を予測することが可能になり,この成果をOhta et al. (2011)にまとめた.ただし,降雨量とw値の変化は線型的なのに対して,気温とw値の関係は乾燥地域の土壌において正確に気温変化を検知できていない.今後は,気候帯に対応した教師信号を追加して再解析し,さらなる気候判定の向上にむけた改善を進めている. これらの現世土壌の解析と平行して,古土壌に本手法を適応して古気候解析への応用を検証してきた.本年度は,中国大陸の熱河層群相当層の古土壌・泥岩を研究材料として分析した.陸成層では,カルクリートが産出しない場合や同位体分析が技術的にできない場合,古気候を解析できないという問題点を抱えていた.しかし,w値が陸成層の解析に有効とわかれば,汎用性の高い古気候解析ツールを提唱できる.解析の結果,w値の変動パターンは,海成層ですでに得られている,古気温の変動パターンと一致することがわかった.この成果は,w値が現世の土壌のみならず,過去の地質記録における気候の判別基準として活用できることを示唆する.加えて,羽毛恐竜と被子植物の誕生時期は,w値が示す古気温が上昇している時期と一致することも判明し,鳥と花の誕生の一因には,古気候の変化が関与していることが示唆される.この成果も,Ohta et al. (2011)においてまとめた.
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