2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740333
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
渋谷 岳造 独立行政法人海洋研究開発機構, システム地球ラボ, 研究員 (00512906)
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Keywords | 太古代 / 熱水 / pH / アルカリ性 / 実験 |
Research Abstract |
これまで地球科学の分野では「深海底の高温熱水は、地球史を通じて酸性のブラックスモーカーである」という考えが常識であった。しかし近年、研究代表者らによって「海水中のCO_2濃度が高かった太古代では、熱水は金属に乏しいアルカリ性のクリアスモーカーだった」とする仮説が提唱された。この仮説は、地質学において長年の謎だった太古代の無機的チャートと縞状鉄鉱層の成因を同時に、且つ非常にうまく説明することができる。本課題ではこの仮説を実験的に検証することを目的としており、今年度は、高濃度のCO_2を含む実験での溶液サンプリング・分析法を確立すること、玄武岩・熱水反応における熱水のpHの温度依存性を明らかにすることを目的とした。 まず、高濃度のCO_2を含む溶液はサンプリングにより相分離してしまうので、分離した気相と液相をすべて回収できるようサンプリング法を改良した。また予備実験を行いサンプリングの最適条件を割り出した。これにより高濃度のCO_2を含む系での実験を行うために溶液のサンプリング方法、及び分析方法が確立した。次に熱水のpHの温度依存性を明らかにするために250℃及び350℃(いずれも初期CO_2濃度400mmol/kg、500bar)においてそれぞれ約3ヶ月間の実験を行った。実験中、サンプリングした溶液の化学分析を行った結果、3ヵ月後の熱水のpH_<in-situ>は250℃の実験では7.1、350℃では7.3となった。250~350℃でのニュートラルpH_<in-situ>は5.5であるので、この実験結果により、CO_2濃度が高い条件で熱水のpHがアルカリ性になることを実験的に証明することができた。現在の高温熱水のpH_<in-situ>が4~6であることを考えると、今回の実験結果は太古代の高温熱水がアルカリ性であったことを示唆している。
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