2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740333
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
渋谷 岳造 独立行政法人海洋研究開発機構, システム地球ラボ, 研究員 (00512906)
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Keywords | 太古代 / 熱水 / pH / アルカリ性 / 実験 |
Research Abstract |
これまで地球科学の分野では「深海底の高温熱水は、地球史を通じて酸性のブラックスモーカーである」という考えが常識であった。しかし近年、研究代表者らによって「海水中のCO_2濃度が高かった太古代では、熱水は金属に乏しいアルカリ性のクリアスモーカーだった」とする仮説が提唱された。この仮説は、地質学において長年の謎だった太古代の無機的チャートと縞状鉄鉱層の成因を同時に、且つ非常にうまく説明することができる。本課題ではこの仮説を実験的に検証することを目的としている。今年度は、新たに実験を1回行い(玄武岩+CO_2海水)、溶液の化学分析を行った。その結果、SiO_2濃度については現世の高温熱水とほぼ同じ20~30mmol/kgであった。一方、現在の熱水に富む金属元素の濃度は著しく低いことが明らかになった。特に現在の高温熱水ブラックスモーカーを特徴付けるFe濃度については数μmol/kg以下であり、これは現在の100~1000分の1程度である。以上のことから、CO_2に富む条件で玄武岩と海水が反応すると、主要成分がシリカで金属元素に乏しい熱水が生成されることが明らかになった。これにより、研究代表者らによって提唱された「海水中のCO_2濃度が高かった太古代では、熱水は金属に乏しいアルカリ性のクリアスモーカーだった」とする仮説を実験的に証明することができた。 また、前年度に明らかになった実験装置の問題点(サンプリングチューブとチタンヘッド接合部の著しい消耗)の改良をおこなった。チューブとチタンヘッドの接合部に挟むガスケットを製作するために、設計、材質の検討、テスト実験を行った。これにより、リーク、装置の破損を防ぎ、部品の消耗を抑えることができるようになった。
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