2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化還元環境に応じた底生有孔虫のエネルギー獲得様式のスイッチ
Project/Area Number |
22740340
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野牧 秀隆 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 研究員 (90435834)
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Keywords | 底生有孔虫 / 硝酸塩呼吸 / 飼育実験 / 物質循環 |
Research Abstract |
本課題の目的は、底生有孔虫が堆積物中の化学環境に応じてエネルギーの獲得形式をスイッチすることで、有孔虫のような小型底生生物がダイナミックに堆積物中を移動、適応しながら物質を代謝し、物質循環に貢献しているという仮説を、実験的手法により確かめることである。 本年は、季節的および堆積物中の深度方向で好気、嫌気環境が変化する浅海域の底生有孔虫を用いた飼育実験と、その分析を行った。底生有孔虫Ammonia beccariiを、好気的環境および嫌気的環境下で1ヶ月間飼育し、同位体比の異なる硝酸塩を定期的に添加し、底生有孔虫もしくはその共生細菌がどのような環境下で硝酸塩呼吸を利用し、有孔虫細胞内の同位体比に反映されているかを検討した。その結果、好気的な環境下ではほとんど硝酸塩を利用していない一方で、嫌気的な環境下では硝酸塩呼吸がかなり活発に行われていることが明らかになった。硝酸塩呼吸の程度は、細胞、殻に残されているアミノ酸の窒素同位体比に記録されているようであり、その結果から、自然環境に生息するAmmonia beccariiも生活史の半分以上は嫌気的な環境で生活している(硝酸塩呼吸に依存している)ことを示唆する。 これらの結果を踏まえ、堆積物の表層は酸化的な一方深部は嫌気的であり、さまざまな有孔虫種がすみ分けている相模湾の底生有孔虫についても、自然環境の試料を用いて、どの種が、どの深度で硝酸塩呼吸を行っているかを検討した。その結果、おもに堆積物の深部に生息するGlobobulimina affinisで、硝酸塩呼吸に依存した窒素同位体比の証拠が見られた。一方で、深度方向で硝酸塩呼吸の程度に明確な変化は見られず、1個体がさまざまな環境を行き来し、その環境に応じた呼吸を行っていることが示唆される。
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