2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740353
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
国広 卓也 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30432628)
|
Keywords | 小惑星 / コンドライト / 二次イオン質量分析法 / コンドリュール / ホウ素 |
Research Abstract |
本研究の主目的は,元素解析を通じ,小惑星において流体等によってもたらされた元素再分配のプロセスを物理化学的に記述することである.小惑星はコンドライト隕石と呼ばれる物質によって構成されていると考えられる.本研究では太陽系円盤で形成したと考えられているコンドリュールに主に注目し,さまざまな元素,特に流体に寄与する反応において反応性が高いホウ素の元素分析によって状態変化を検出することを試みた. 二年目である平成二十三年度は,初年度で作成した標準試料を用い,高感度局所ホウ素分析手法の確立・発展にあたった.試料表面をフッ酸でリーチングすることによる汚染軽減に加え,二次イオン質量分析法を応用しイオンビームの照射により分析領域周辺も同時にスパッターし,機械的アパチャーにより中央部のみを質量分析法に導入,また深さプロファイル解析を組み合わせることにより,30ミクロンの空間分解能で0.0000005%レベルの高感度定量手法が確立された. この分析手法をコンドライトのコンドリュールに応用した.ホウ素存在度はコンドリュールの主要構成物質であるカンラン石において0.0000005%以下が大半を占めた.コンドリュールの化学組成との相関は,ホウ素元素分布は小惑星上にて平衡に至らず,ネビュラプロセスからの流体プロセスによるダイナミクスを反映していること示唆する.またコンドリュールの主要鉱物においてホウ素存在度が極めて低いという事実はこれまでのホウ素研究に一石を投じることとなる. 更に,極微量試料に特化したホウ素を含む多元素同時分析手法を確立し,小惑星から直接持ち帰られたハヤブサ試料にこの分析を応用した.局所同位体分析と同時に応用した多元素分析の応用結果は,コンドライトが小惑星を起源とする物質であることを強く支持する重要な成果となった.
|