2011 Fiscal Year Annual Research Report
消えたキセノンの謎の解明に向けた量子化学計算によるアプローチ
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22750002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野 ゆり子 北海道大学, 大学院・理学研究院, 博士研究員 (30507190)
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Keywords | 希ガス化合物 / 量子化学計算 / 地球内部物質 / ミッシングキセノン / 振動分光定数 / 相対論効果 / モンテカルロシミュレーション / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
本研究では地球科学分野で議論となっている「ミッシングキセノンの謎」を解明する鍵として、希ガスが地球内部で岩石等に含まれる成分と化合物を生成して存在しているという描像を提案し、高精度な量子化学計算によりその仮説を実証とする試みである。23年度にはDFT計算によるスクリーニングプログラムを作成し、希ガスと原子及び2~3原子よりなる化合物との相互作用の計算を行った。量子化学計算プログラムはGaussian09を使用し、全ての計算は密度汎関数法(DFT)のB3LYPで行った。約130種類のモデルとキセノンに対して計算を行ったところ、Al3+及びMg2+が一重項で、Fe2+が三重項でキセノンと結合を形成することが分かった。しかしながら、これら3つの元素(アルミニウム、マグネシウム、鉄)はすべて、地殻において[SiO4]4-のカウンターカチオンとして存在しているため、結晶間隙では反応が起こりにくいと予想される。また金属原子と希ガスとの反応では、金属原子の配位子による安定化に伴い、キセノン-原子間の結合が強くなると傾向も確認された。例えば、金は原子だとキセノンと結合を生成しないが、金と相性の良いチオール基がつくと電子状態が変化し、Xe-Au結合を形成する(Xeが結合したときの安定化がより大きくなる)。またより実在に近い環境での計算を試みるため、希ガス原子と特に強く結合を生成するBeOについて、モンテカルロシミュレーションによりXeまたはArマトリックス中でのBeOの振動数を計算し、周囲のマトリックスの影響を検討した。シミュレーションによりXeBeO及びArBeOの振動数は赤方遷移し、実測値を再現し計算手法の妥当性が確認された。今後はこの成果を高圧下シミュレーションに適用し、よりリアルな地球内部における希ガスシミュレーションへの応用が期待される。
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