2010 Fiscal Year Annual Research Report
ラマン/ハイパーラマンハイブリッド顕微分光法の開発と溶媒環境の振動分光的計測
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22750008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島田 林太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (70548940)
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Keywords | 分子近接場 / 非線形ラマン分光 / 顕微分光 / 分子間相互作用 |
Research Abstract |
顕微鏡下における試料中の単一の点に励起レーザー光線を集光し、焦点から同時に発生するラマン散乱とハイパーラマン散乱を独立した2つの検出系で同時に計測できるラマン/ハイパーラマンハイブリッド顕微分光系を新たに制作した。ハイパーラマン散乱、ラマン散乱それぞれについて前方散乱および後方散乱配置を検討した結果、共に後方散乱配置の組み合わせの場合に信号損失が最少となり、高速にスペクトルを取得できると結論した。本装置を用いてリポソームに封入した全トランス-β-カロテンの計測を行い、以下に挙げる2点について新たな知見を得ることができた。1、リポソームに封入されたβ-カロテンは励起用近赤外レーザー光線の照射により、試料の変性が促進され、ハイパーラマンスペクトルの測定が困難となることが明らかとなった。さらに、この変性はリポソームを取り囲む水を窒素バブリングすることにより低減可能なことを明らかにした。水に溶存した酸素がβ-カロテンの変性に寄与していると考えられる。2、リポソーム中のβ-カロテンのハイパーラマンスペクトル中にはリポソーム構成分子であるリン脂質由来と考えられるバンドが増強されて観測され、リポソーム中においても「分子近接場効果」による増強効果が存在することを明らかにした。しかし、シクロヘキサンなどの有機溶媒を用いた均一溶液中で観測される「分子近接場効果」に比べてリポソーム中では増強効果が小さく、赤外吸収強度と増強されたバンドの強度が対応しないなどの違いが見られた。均一溶液中に比べ、リポソーム中のβ-カロテン分子は近傍分子(リン脂質)に対して特定の配向をとりやすい傾向があると考えられるため、これらの違いは、β-カロテン分子と近傍分子の相対的な配向の違いに起因している可能性がある。
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Research Products
(6 results)