2011 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的モデルポテンシャル法の拡張による選択的アクチニド分離捕捉剤の理論設計
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22750011
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
森 寛敏 お茶の水女子大学, お茶大アカデミック・プロダクション, 特任助教 (90501825)
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Keywords | アクチニド / 相対論的モデルポテンシャル法 / キレート抽出剤 / 理論的分子設計 |
Research Abstract |
放射性廃棄物の処理方法として,現在,地層処分システムが運用されている.地層処分システムは,地層中の放射性核種の移行速度が十分に遅く,地下水流に沿った放射性核種の拡散が無いことを前提に,放射性核種の安定物質への変換を行うものである.だが,諸外国の環境化学チームにより,この前提は100%満たされておらず,放射性アクチニドを含むコロイドが検出された例も存在することが明らかにされた.蓄積されたアクチニドの漏出を防止し,地球環境に配慮した,安全な放射性廃棄物処理技術を確立するには,選択的にアクチニドを捕捉分離・固定する技術,すなわちアクチニドが形成する化学結合に関する基礎研究が欠かせない.本研究は,申請者が開発を行ってきた高精度量子化学計算理論:相対論的モデル内殻ポテンシャル(MCP)の拡張・応用によりアクチニド化学の本質=電子状態に理論化学の観点から迫る,環境エネルギー分野への寄与を目指す拡張発展的研究である.2011年度は,アクチニドとの比較検討を行なうため,アクチニドと同じf-block元素であるランタニドについて,4f電子を内殻電子として省略近似した4f-in-coreMCP法の開発に取り組んだ。開発した4f-in-coreMCPは三価ランタニドを含む分子の分子構造を,4f電子を露に取り扱った4f-in-valenceMCPに匹敵する精度で再現できることが分かった。4f-in-coreMCPでは4f電子を省略計算するため,不完全に充填された4f電子軌道の存在に由来して,一般に開殻電子状態となるランタニドの電子状態計算を閉殻的に取り扱って計算上できる。これにより,ランタニド水和系のような大規模系についても,高速な第一原理分子動力学計算も可能になった。現在引き続き,アクチニドの5f軌道を内殻的に取り扱った5f-in-coreMCPの開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度は,f-block元素の量子化学計算を高速化する手法として,f-in-coreMCP法の開発を進めた。これにより,アクチニド/ランタニドの第一原理分子動力学計算が実現した。2012年度は,本年度までの成果を応用し,溶媒中でのアクチニド/ランタニドとキレート分子の相互作用を解明する。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年度の成果をふまえ,アクチニド元素に対する5f-in-coreMCP法を開発する。開発したMCPを第一原理分子動力学計算に応用し,溶媒和されたアクチニドイオンの物理化学的挙動を,解明する。本文書作成時現在,既に5f-in-coreMCPの開発に取り組んでいるが,5f-in-coreMCPの開発での困難は,アクチニド元素が取り得る,広範な酸化数である。従来MCP法では,参照とする全電子計算の結果を,中性元素のものとしていた。だが,このやり方では,例えば6価電子状態を取り得るUなどの電子状態を,全電子計算に匹敵するレベルで,再現できないことが分かっている。この困難を解決するため,現在,複数の電子状態の全電子計算結果を参照とするMCP決定スキームを考案しているところであり,5f-in-coreMCPはそのスキームで開発したいと考えている。
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Research Products
(7 results)