2010 Fiscal Year Annual Research Report
ジェミナルに基づく量子化学理論の確立とそのナノ磁性デバイス材料への応用
Project/Area Number |
22750016
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 正人 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (40514469)
|
Keywords | 化学物理 / 計算物理 / ナノ材料 / APSG法 / MP-MCPT法 / 静的電子相関 / 摂動論 / 開殻系 |
Research Abstract |
量子化学理論では、一電子波動関数(オービタル)から全電子波動関数を構築するのが一般的であるが、本研究では二電子対波動関数(ジェミナル)を基本に用いることで、新しい高精度多配置量子化学計算の理論体系とプログラムを確立することを目的としている。 ジェミナル量子化学の基本理論は反対称化強直交ジェミナル積(APSG)法であるが、本年度は、まずAPSG波動関数に対して適用可能な簡便な摂動補正理論として、MP-MCPT理論を開発した。この理論は、単参照波動関数に対するMoller-Plesset (MP)摂動論と同じハミルトニアン分割を多配置波動関数に適用可能とした拡張であり、他の多参照摂動補正理論よりも単純かつ容易に摂動補正を行うことが可能なものである。実際にこの理論に基づいたプログラムを作成し、APSG波動関数に対して適用したところ、MP-uMCPT法と呼んでいる実装を行うと他の摂動補正法とほぼ同等の高い精度を与えることがわかった。 次に、APSG法を拡張して開殻系を取り扱える表式を導出した。ジェミナルは電子対の一重項波動関数であるため、開殻部分をオービタルで記述することによりこの拡張を実現した。ほぼ同じ拡張はRassolovらにより提案されているが、我々はスピン制限型の実装を行いスピン混入誤差を取り除いた。 さらに、APSG計算の収束性の改善にも取り組んだ。自然軌道の最適化過程でAnderson法を導入することで、計算コストの高い積分変換を含む軌道回転の回数を半分から1/3程度に削減することに成功した。 本研究課題では、APSG法を大規模系に適用する際に分割統治(DC)法の活用を考えているが、DC法においても(1)開殻系計算への拡張、(2)エネルギー勾配表式の開発、の進展があった。
|