2010 Fiscal Year Annual Research Report
液体の水素結合は価電子励起状態にどのような変化を与えるか
Project/Area Number |
22750019
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森澤 勇介 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (60510021)
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Keywords | 減衰全反射遠紫外分光法 / 電子励起状態 / 凝縮相 / 水素結合 |
Research Abstract |
本研究の目的は、研究代表者らが開発した減衰全反射遠紫外(ATR-FUV)分光法を用いて水素結合が価電子励起状態にどのような変化を与えるかを明らかにすることである。水やアルコールなどの価電子励起遷移はFUV領域のスペクトルとして観測される。これまでの研究から、これらの分子のATR-FUVは水素結合状態の変化に対し鋭敏なシフトを示すことがわかっている。本研究では、これまでに観測されていなかった低温のATR-FUVスペクトルを観測し、液相での水素結合による価電子励起スペクトルの変化を明らかにする。そして、軟X線分光により観測される内殻電子励起スペクトルとの比較から液体の電子-ホール相互作用について考察する。ATR-FUV分光法は研究代表者が所属するグループで開発された分光法であり、液体の価電子励起状態を観測する最適な方法である。本研究では特に冷却状態(~-100℃)におけるATR-FUVスペクトルを観測するために、冷媒循環式低温用温度制御ATR-FUVプローブの設計・製作を行った。また、これまで観測されていない、アルコール・ケトン・アルカン・アミドについてATR-FUVスペクトルの濃度依存測定を行いそれらの吸収の帰属を行った。アセトン・アルカンについては得られた液相の実験結果と気相実験データおよび理論的計算結果との詳細な比較を行った。その結果、遠紫外領域においてケトンが凝縮相においてもRydberg状態のような化学構造に依存する電子励起による吸収を持つことを世界で初めて明らかにした。また、アセトン、アミド、アルコールに関して様々な溶液の濃度依存スペクトルを測定し、これら溶媒-溶質間の水素結合が電子励起スペクトルにどのような変化を与えるか、理論的な解析を行う基礎的実験結果を得た。
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