2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体結晶中のコヒーレントフォノン測定と制御に関する新規手法の開発
Project/Area Number |
22750022
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
坪内 雅明 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (40392039)
|
Keywords | 応用光学 / 化学物理 / 原子・分子物理 / 光源技術 |
Research Abstract |
固体結晶中のコヒーレントフォノンの実時間観測及びその制御を目指して、本年度は高強度テラヘルツパルス光源の開発、テラヘルツ光を用いた時間分解分光手法の開発を行った。 テラヘルツ光発生のために用いるLiNbO_3結晶の冷却によるフォノン吸収の低減、新たなLiNbO_3結晶デバイスのデザイン及び開発を行い、高強度テラヘルツ光の発生を試みた。結果として、パルスエネルギー50nJ/pulse、電場強度50kV/cm、帯域0.2~25THzのテラヘルツパルス光を得た。 昨年度に立ち上げた時間分解テラヘルツ分光装置を用いて、シリコン単結晶の光誘起キャリアダイナミクスの実時間観測を進めた。裏面反射テラヘルツ光を用いた時間分解分光法を新たに開発し、従来の分光手法では観測することのできなかったシリコン内部におけるキャリア分布、及びダイナミクスの詳細を観測することに成功した。観測結果はマクスウェル方程式の厳密解との良い一致を示し、固体物性測定の新規手法としてその信頼性と重要性が確認された。本観測手法を、シリコン単結晶への紫外光照射におけるキャリアダイナミクスの観測に適用した。この時1μm以下の薄いキャリア薄膜が形成されるが、その薄膜でTHz光が反射された時、周波数帯域のブルーシフトが顕著に観測され、現在理論研究者と協力して実験結果の解釈を進めている。この結果は、テラヘルツ光の広帯域化、波形整形技術への展開といった応用科学的観点だけではなく、高密度プラズマと光との相互作用といった基礎科学的観点からも非常に興味深い。 高強度テラヘルツ光により誘起される固体内ダイナミクスの観測も同時に進めたが、テラヘルツ光のさらなる高強度化が必要であることがわかった。高強度化を急ぐと共に、誘起されたフォノンダイナミクスの観測手法の検討を行った。
|