Research Abstract |
本研究の目的は,カリックス[4]アレーン類の二つの水酸基を他の配位性官能基に直接置換した二置換ハイブリッド体の合成と機能開発であり,本年度は下記の成果を得た。 1.カリックス[4]アレーンの1,3-ビス(トリフルオロメタンスルホン酸エステル)に対し,種々の求核剤を用いるUllmann型反応を精査した。その結果,ジフェニルホスフィンオキシドおよび亜リン酸ジエチルを用いるUllmann型反応により,中程度の収率ではあるが,1,3-ビス(ジフェニルホスフィノイル)体および1,3-ビス(ジエチルホスホノ)体をそれぞれ得ることことに成功した。さらに,ヨウ素源存在下のUllmann型反応により,1,3-ジヨード体を高収率で得る条件を見出した。続いて,1,3-ジヨード体のメタル化を経るヨード基の変換を検討した。その結果,残存ヒドロキシ基をメチルエーテル化した1,3-ジヨード体をブチルリチウムで処理し,二酸化炭素との反応後,脱保護することで,ジカルボン酸誘導体を高収率で得ることに成功した。 2.1,3-ビス(ジフェニルホスフィノイル)体をトリクロロシランで還元後,ヒドロキシ基をメチルエーテル化することでジホスフィン配位子を合成した。合成したジホスフィン配位子の錯形成能を明らかにするため,二価パラジウム錯体を種々合成し,それらのX線結晶構造解析を行った。その結果,二核パラジウム錯体や,二つのリン原子がパラジウムにトランス配位した単核錯体の合成と構造解析に成功した。 3.1,3-ビス(ジエチルホスホノ)体からジホスホン酸誘導体を合成し,液-液抽出実験によりその希土類抽出能を評価した。その結果,ジホスホン酸がイオン半径を精密に識別し,原子番号の大きい重希土に対して高い選択的抽出能を示すことを見出した。さらに,残存ヒドロキシ基へ導入する官能基の抽出能に与える影響も明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カリックス[4]アレーンにリン原子団およびヨード基を導入した目的の1,3-二置換体の合成を,Ullmann型反応を用いて達成できた。また,ヨード基の変換により目的のジカルボン酸の合成にも成功している。さらに,ジホスフィンのパラジウムに対する特異な錯形成挙動を明らかにし,ジホスホン酸を用いた希土類イオンの選択的抽出剤の開発にも成功している。以上より,本研究課題は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
カリックス[4]アレーンにリン原子団を導入した1,3-二置換体の合成における高効率化を検討する。具体的にはUllmann型反応のさらなる条件検討,ならびに1,3-ジヨード体のメタル化を経るヨード基の変換を検討する。また,硫黄架橋のチアカリックス[4]アレーンを土台とした1,3-二置換ハイブリッド体の合成も検討する。さらに,1,2-二置換体の合成も検討したい。一方,機能開発に関しては,触媒反応への応用を指向して,ジホスフィン配位子の金属イオンへの錯形成挙動を詳細に調査する。また,ジホスホン酸を土台とし,さらなる化学修飾を施すことで,高性能な金属抽出剤を開発する。さらに,ジカルボン酸の機能開発を検討する。
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