2011 Fiscal Year Annual Research Report
アリールオキシド配位子を持つ鉄錯体による小分子活性化
Project/Area Number |
22750049
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石田 豊 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (00465931)
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Keywords | 鉄錯体 / 小分子活性化 / アリールオキシド |
Research Abstract |
本研究の目的は、反応の鍵中間体として重要な化学種である金属-元素多重結合種のうち、特に鉄-窒素多重結合種に注目し、これらを合成し、構造、電子状態、反応性を明らかにする事である。これまで、単核の鉄-窒素二重結合種、鉄イミド(Fe=NR)及び三重結合種鉄ニトリド(Fe=N)錯体の報告例があるが、カルベン、ホスフィンといったいわゆるソフトな配位子を有している例が多い。特に高原子価鉄ニトリド錯体の例は数例であり、ハードな配位子を用いた例はない。オルト位に嵩高いアダマンチル基を二つ持つアリールオキシド配位子を用いて、二配位単核鉄錯体Fe(OAr)_2を合成、単離し、その反応性を検討した。二電子還元反応による鉄-窒素二重結合種、イミド錯体の生成を期待し、アジド化合物との反応を行なった。嵩高いアルキルアジドであるアダマンチルアジドとの反応では、窒素分子が脱離しアダマンチルイミド錯体が発生している事が示唆された。形式的にアリールオキシド配位子のアダマンチル基の一つのC-H結合にイミド窒素が挿入したと考えられる。アルキルイミド錯体の反応性の高さが示唆される結果といえる。一方、アリールアジドとしてメシチルアジドとの反応を行なうことで、目的とする鉄イミド錯体が得られた。分子構造についてX線構造解析により明らかにし、鉄原子周りは四配位であることが分かった。Fe=N二重結合が形成され、嵩高い配位子によって、立体的保護を受けていることが分かった。目的の一つとする鉄-窒素多重結合種の合成と構造解析に成功した。アジド化合物との反応で生成する鉄イミド錯体の安定性・反応性は、イミド窒素原子上の置換基に大きく依存する事が分かった。
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