2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22750051
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 裕美子 京都大学, 化学研究所, 助教 (80462711)
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Keywords | 鉄 / カルベン / 低配位リン / ルテニウム |
Research Abstract |
鉄(I)錯体[FeBr(BPEP)](1)とフェニルジアゾメタンとの反応では、ジアゾメタンのN-N結合切断が進行しニトリル錯体[FeBr(PhCN)(BPEP)](2)が生成する。本反応では、鉄カルベン種が活性種として機能しているものと考え、錯体1によるジアゾメタンのN-N結合切断について詳細解明にとりくんだ。錯体1とジアゾメタンとの反応において、ニトリル錯体2と同時にイミン錯体[FeBr(PhCHNH)(BPEP)](3)が生成することを、錯体3を別途合成することにより確認した。これにより、錯体1とジアゾメタンとの反応では一旦鉄カルベン種が生成し、これとさらにもう一分子のジアゾメタンが反応してニトリル錯体2およびイミン錯体3が生成することが示された。しかしながら、反応途中で発生するカルベン錯体の単離にはいたらなかった。そこで、系中にオレフィンや二酸化炭素など、種々の基質存在下、錯体1とジアゾメタンとの反応により系中で鉄カルベン種を発生させることで、その反応性解明に取り組んだが、現段階では生成物の同定にはいたっていない。 もう一つの取り組みとして、ルテニウムカルベン種の合成にも取り組んだ。鉄と同じ8族に属し、より安定性に富むルテニウムを用いれば、BPBPに支持された金属カルベン種の反応性解明に有効であると考えた。[Ru3(CO)12]および[RuCl(allyl)(CO3)]とBPEPとの反応により、[Ru(CO)2(BPEP)](4)および[RuCl(allyl)(CO)(BPEP')](5)がそれぞれ生成することを見出した。さらに、錯体5は光照射下、カルベン源であるジアゾメタンと反応して新規生成物を与えることを見出した。この反応は、本手法がBPEPを持つルテニウムカルベン種合成に有用であることを示しているといえる。
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Research Products
(11 results)