2011 Fiscal Year Annual Research Report
5-7族金属クラスターの白金族金属代替触媒としての利用
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22750061
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上口 賢 独立行政法人理化学研究所, 物質評価チーム, 専任研究員 (10321746)
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Keywords | 不均一系触媒反応 / 無機材料 / モリブデンクラスター / 白金族金属代替 / C-O結合切断反応 / 開環反応 / テトラヒドロフラン / ブチルアルデヒド生成 |
Research Abstract |
白金族金属触媒は金額にして我が国で出荷される触媒の7割を占めるが、高価なうえ希少金属のため代替触媒の開発が急務である。我々はこれまでに正八面体金属骨格を有する5-7族の無機クラスター化合物が白金族金属を用いて行われている種々の反応の触媒となることを報告してきた。今年度さらに反応スクリーニングを行った結果、種々の環状エーテルの開環によるアルデヒドの生成反応が進行することを見いだした。すなわち、モリブデンクラスターを水素気流下300-450℃で加熱活性化処理後、引き続き温度を変えずにテトラヒドロフランを供給すると、C-O結合切断を伴う開環反応が進行しブチルアルデヒドが生成した。トリメチレンオキシドやテトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシドのような他の無置換環状エーテルについても同様の開環反応が進行した。さらに、2-メチルテトラヒドロフランのようなアルキル置換環状エーテルの開環反応も進行した。一方、モリブデン金属や八面体クラスター骨格を持たないモリブデン硫化物を触媒としてもこれらの反応は進行しなかったことから、反応の進行にはクラスターが必須であることがわかる。アルキル置換環状エーテルの開環反応はPtを用いて行われているが、無置換環状エーテルの開環によるアルデヒド生成反応は白金族金属でも困難であり他の触媒についても報告例が皆無である。触媒活性発現機構について詳細に調べた結果、モリブデンクラスターは大気中保存により酸素をとりこむが、上記加熱活性化によりクラスター骨格を保持したまま酸素が脱離することにより配位不飽和サイトが現れ、これが活性点として働くことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
キャリアガスの種類・濃度や反応温度などの反応条件を変えながら種々のクラスターおよび基質を用いて環状エーテル開環反応の反応性を詳細に調べるとしていた当初の計画を予定通り実施できただけでなく、当初計画していなかった触媒活性発現機構の詳細な解明まで進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
クラスターが白金族金属代替触媒として機能しうることはほぼ実証できた。今後は反応スクリーニングにより代替触媒としての適用範囲の拡大を目指すとともに、種々の担体への担持や配位子の化学的引き抜きによる配位不飽和サイト数の増加等により高活性かつ高選択性を示す高機能触媒としての可能性も探る必要があると考えている。
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