Research Abstract |
本研究の目的は,DNA二重鎖を介した電子移動度の直接測定により単分子レペルで定量評価を行い,DNA配列中の塩基対の種類,塩基対ミスマッチの種類・数・位置依存的な電子移動度の変化といったDNA鎖の電気伝導性に関する基礎的な知見を得るとともに,これに基づきDNA鎖を介した電荷移動機構の理解及びDNAからなる"自己組織化電子回路の作製"を目指すことである.本年度は,研究実施計画に基づき,DNA二重鎖の電子移動度の測定系を構築し,予備的な単分子計測および短鎖DNA二重鎖の単分子可視化計測を行った.まず,DNA鎖を固定化した基板を電気化学STMによるDNA二重鎖単分子可視化法を構築し,11塩基のDNA鎖を介したトンネル電流の流れやすさの直接計測に成功した.これにより,ミスマッチを含むDNA鎖のトンネル電流の流れやすさの違いを検出可能であることを示した(Chem.Comm.,(2010),46,2581-2583).次に,このDNA鎖を長鎖DNAに対しても測定可能な計測系構築のため,DNA鎖一分子に対するプローブ分子(金ナノ粒子)の作製を行い(Chem.Comm.,(2010),46,6132-6134),数十塩基鎖に対する測定系構築のための準備を行った.こうした電気化学STMによる測定系の構築と並行し,微小隙間電極によるDNA鎖の測定系の構築を行い(J.AppL.Phys.,108,064312,(2010)),およびそれをもちいた核酸塩基モノマーおよびオリゴマー単分子に対する電気計測に成功した(第72回応用物理学会,第58回応用物理学関係連合講演会,日本化学会第91春季年会による口頭・ポスター発表).また,これらの成果をRNA小分子の計測に展開するため,予備研究もおこなった(Chem.Comm.,(2011),47,2125-2127).
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