2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22750084
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
五月女 宜裕 独立行政法人理化学研究所, 袖岡有機合成化学研究室, 研究員 (50431888)
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Keywords | 有機触媒 / 不斉触媒 / 水素結合 / エントロピー / マイケル反応 / フェノール / グアニジン / チオウレア |
Research Abstract |
最終年度は、より構造自由度の高い1,3-ジアミン骨格を有する新規鎖状グアニジン/チオウレア有機触媒を用いる不斉反応の検討に焦点を当てた。 まず、昨年度開発したフェノール類を求核剤として用いるニトロオレフィン類のFriedel-Crafts(FC)反応において、触媒の構造活性相関について検討を行った。その結果、鎖状1,3-ジアミンをキラルスペーサーとして用いた場合、活性化エントロピー(ΔΔS)依存的に立体選択性が制御されることが分かった。一方、鎖状1,2-ジアミン型触媒を用いた場合には、活性化エンタルピー(ΔΔH)依存的に、立体選択性は制御された。即ち、キラルスペーサーの自由度に依存してエンタルピー/エントロピーの補償モードが逆転することが明らかとなった。更に、触媒上の置換基の最適化を行ったところ、グアニジン上、キラルスペーサー上に嵩高い置換基を導入した場合、系の乱雑さ(ΔΔS)の効果がより鮮明となることも分かった。特に触媒のグアニジン上に6員環、キラルスペーサー上にイソプロピル基を有する鎖状触媒を用いた場合、活性化エントロピー項単独(ΔΔS>0,ΔΔH=0)で、立体選択性が制御されることも見出した。 新たに開発した鎖状1,3-ジアミン型触媒は、不斉C-P結合形成反応への適用も可能であった。即ち、ジフェニルフォスファイトとニトロオレフィン類を用いるフォスファマイケル反応を開発することができた。この反応は、様々なニトロオレフィン類を用いることが可能であり、一般的な有機触媒が苦手とするβ位に嵩高い脂肪族ニトロオレフィンに対しても有効であった。本反応系では、反応溶媒を適切に選択することで、触媒の自己集合様式を調節可能であることも見出した。 以上、本研究では、従来着目されてこなかった鎖状有機触媒を創製し、その立体制御機構を詳細に検討することで不斉有機触媒の設計理論を拡張することができた。
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