2011 Fiscal Year Annual Research Report
デザイン型超原子価ヨウ素化合物を触媒に用いる環境調和型選択的酸化反応の開発
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22750087
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 不斉合成 / 超原子価ヨウ素 / 酸化反応 / カップリング / 環境低負荷型反応 / 不斉触媒 |
Research Abstract |
本申請研究では、資源少国の日本で世界の1/3を産出しているヨウ素に着目し、その有効利用の確立を大きな目的とし、デザイン型超原子価ヨウ素化合物を触媒に用いる環境低負荷型選択的酸化反応の開拓を行った。ヨウ素の遷移金属に似た酸化・還元機能に着目し、従来の毒性の高い重金属酸化剤や遷移金属触媒に代わる非金属系超原子価ヨウ素触媒による幾つかの高選択的環境調和型酸化反応に成功した。代表的な成果として: (1)フェノール誘導体のエナンチオ選択的脱芳香型酸化に伴うスピロラクトン化反応に有効な新規キラル超原子価ヨウ素触媒(*ArILIL2)を設計した。立体配座の柔軟性と分子内二次的相互作用を効率よく活かした触媒設計で、高度な不斉誘起と基質適用範囲の拡大に成功した。新規触媒を用いることで、1-ナフトールのみならず、2-ナフトールやフェノール誘導体においても初の脱芳香型酸化反応に成功した。 (2)共酸化剤として安価で安全な過酸化水素水を存在下、触媒前駆体としてテトラブチルアンモニウムヨージドやカリウムヨージドを用い、in situで調製されるヨウ素酸塩[次亜ヨウ素酸塩(IO^-)や亜ヨウ素酸塩(O=I-O^-)りによる、オキソカルボン酸の分子間酸化的カップリング反応(オキシラクトン化反応)に成功した。また、本手法は様々なカルボニル化合物とカルボン酸の分子間酸化的カップリング反応(α-オキシアシル化反応)にも拡張できた。その際に、共酸化剤はTBHPが好ましく、副生成物はtert-ブチルアルコールと水のみであった。また本手法で効率よく合成できるα-(メタ)アクリロイルオキシケトンは防汚塗料組成物やポジ型レジスト材料として機能するポリマーの合成モノマーである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
不斉反応の中でも最も困難とされるキラル超原子価ヨウ素触媒を用いる不斉酸化反応において、世界最高なエナンチオ選択性(>99%ee)を達成できた。また、過酸化水素やTBHPのように安全で安価な酸化剤を用いることのできる新規ヨウ素酸塩触媒システムを世界に先駆けて開発した。これらの成果は、有機合成化学の進展に大きく貢献するものであり、有機分子触媒による環境に優しい選択的酸化法として産業界からも世界的に注目を集めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)新規な光学活性超原子価ヨウ素触媒(*ArIL_1L_2)を用いて、共酸化剤としてmCPBAまたは過酢酸存在下、触媒的エナンチオ選択的酸化的カップリング反応(C-C,C-0,C-N結合形成)の開拓を行う。 (2)共酸化剤存在化として過酸化水素水またはtert-ブチルヒドロペロキシド(TBHP)存在下、触媒量の第四級オニウムヨージド触媒前駆体(R*_4M^+I^-,M=P or N)からin situで(次)亜ヨウ素酸塩(R*_4M^+^-O-I=OやR*_4M^+^-O-I)を調製し、様々な分子内及び分子間酸化的カップリング反応の開発を行う。具体的には、カルボニル化合物とアミンやアミドのカップリング反応(α-オキシアミノ化)や、ベンジル位やアリル位とカルボン酸やアミン(或はアミド)のカプリング反応を検討する。
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Research Products
(19 results)